高卒工場勤務はどう?年収・出世事情やメリットデメリットを転職・独立経験者が解説

高卒の工場勤務の年収や労働環境を解説 工場勤務・製造関係の小話

巷やインターネット上では、「高卒で工場勤務は底辺」「工場で働くなんて人生終わり」なんてまことしやかに囁かれています。実際、「今は工場で働いているけど、本当に今のままでいいんだろうか?」「もっと良い仕事はないだろうか」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

筆者は高卒でライン工の仕事を、同業種への転職も含めて約10年間経験しました。知り合いにも工場勤務の人が多いです。その筆者の結論としては、「3K(汚い・きつい・危険)は間違いないけど、待遇や労働環境は巷で言われるほど悪くない」ということです。実際、筆者自身はやりたいこと優先で退職しただけで、工場で働くこと自体は嫌いではありません(むしろ他の仕事より自分に合っていると感じています)。

本記事では、高卒工場勤務で転職・独立(現在はフリーランスWebライター6年目)も経験した筆者が、元同僚や友人の経験談も併せて、高卒の工場勤務の年収や出世事情、メリット・デメリットを解説します。工場勤務を続けるか悩んでいる方、工場勤務を辞めた人の体験談を知りたい方は、ぜひご覧ください。

意外と高収入?高卒工場勤務の年収などさまざまな疑問を解説

高卒工場勤務は、低年収や劣悪な労働環境などマイナスイメージを強く持たれることが珍しくありません。では、実際のところはどうなのでしょうか。まずは年収や労働環境など、高卒工場勤務についてのさまざまな疑問を解説します。

政府の統計データや筆者および筆者同僚・知り合いの経験談を基に解説しますが、100%の正解ではないので参考程度にお読みください。

【年齢別】高卒工場勤務の年収はいくら?

高卒工場勤務の平均年収は、439万900円だと推測されます。平均年収額は、厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」の「製造業従事者(企業規模計10人以上)」「高校」を基に算出しました。また今回は、製造業を工場勤務として計算しています。

製造業と全産業で、平均年収金額などのデータを比較したものが次の表です。

給与・年収金額(製造業)金額(全産業)
所定内給与額27万3,500円27万3,800円
きまって支給する
現金給与額
31万円30万4,600円
年間賞与
その他特別給与額
87万900円69万300円
平均賃金372万円365万5,200円
平均年収459万900円434万5,500円

  • 所定内給与額:きまって支給する現金給与額から、残業代や時差手当などを差し引いた額
  • きまって支給する現金給与額:基本給、各種手当、残業代を含む金額(6月に支給されたもの)
  • 年間賞与その他特別給与額:調査実施年の前年1年間のボーナス

所定内給与額は「残業なしの収入」、きまって~は「残業代込みの収入」、年間賞与~は「ボーナス」のことです。続いて、年齢別の高卒製造業の平均年収も見ていきます。

高卒工場勤務の年齢別平均年収
年齢別平均年収
(製造業)
平均年収
(全産業)
19歳まで259万900円256万3,600円
20~24歳339万7,800円328万800円
25~29歳381万8,300円365万8,000円
30~34歳431万7,300円405万9,900円
35~39歳464万9,900円434万3,600円
40~44歳498万7,800円465万4,800円
45~49歳525万900円490万9,400円
50~54歳533万6,600円498万1,700円
55~59歳543万3,200円499万1,100円
60~64歳387万4,700円386万6,800円
65~69歳305万7,600円319万9,700円
70歳以上282万9,600円292万8,500円
参考:厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査 産業大分類

意外にも、全産業平均と比較しても製造業のほうが年収が若干高い傾向が見られます。大卒の研究開発や設計、生産管理の仕事はデータに含まれていません。工場ごとの待遇に左右されるとはいえ、高卒工場勤務の年収として1つの参考になると思います。

Webライターあひる
ちなみに、同調査における製造業の短期労働者(パートやアルバイト)の平均時給は1,117円です。

高卒工場勤務の主な仕事は?

高卒工場勤務は、製造ラインといった現場での仕事がメインとなるケースがほとんどです。例えばライン作業やピッキングなどのTHE・工場勤務という仕事から、工務関係品質管理などさまざまな業務が挙げられます。工場によっては、総務や経理などの事務系の仕事を高卒で採用するケースも見られます。主な仕事の例は次のとおりです。

  • ライン作業:ベルトコンベアや配管などから流れてくる先の工程(上流工程のこと)の製品に対し、組立・加工・検査などを施し次の工程へ流す仕事
  • ピッキング:倉庫内などで指示された製品や荷物をピックして集める仕事(軽作業でも重量物を扱うこともあるので、「軽」に騙されないように)
  • 工務:工場のインフラ(電気、エアー、排水など)の管理や、製造ライン機器のメンテナンスを行う仕事
  • 品質管理:製造ラインの安全衛生状態や製品の品質について管理・検証・指示をする仕事
  • 事務系の仕事:工場の運営・製造をスムーズにするためにさまざまな作業をする総務や、工場全体の経費管理などのお金を管理する経理などの仕事

一方で、研究・開発や購買などの基礎学力が必要なポジションは、大卒以上の学歴の方が担当するのが一般的です。自分の周りだと、高卒からそちらの部署へ移動する人を見たことがありません。求人募集でも、大卒以上しか応募資格がないものがほとんどでした。

Webライターあひる
工場勤務=ベルトコンベアのライン仕事ではないのです。

高卒工場勤務って出世できる?

前提として高卒の工場勤務が出世できるか否かは、他の仕事と同じく工場の人事体制や考え方に大きく左右されます。私や同僚、友人の話を聞いていると、工場の課長・部長クラスなら高卒でも登用されるケースが多いですね。

一方で、本社勤務や経営陣レベルになると、よほどのことがない限り出世が難しいイメージがあります。工場が新卒の高卒を採用する理由の多くは「工場現場の人材の補充・育成」なので、そっち方面で出世してエキスパートになってねってことだと思っています。とはいえ、中小企業だと経営陣や工場長になる人は珍しくありません(大企業クラスだと流石に厳しいかも)。

【誇りを持ってよし】高卒工場勤務の3つのメリット

高卒工場勤務のメリット

高卒工場勤務のメリットとして、次の3つが挙げられます。

  1. 実はスキル・技術が身につく
  2. 夜勤手当や休日手当などで手取りが増える
  3. 意外と労働環境が整備されつつある

「高卒工場勤務の自分に自信が持てない」「工場で働いてて何か良いことあるの?」と思う方は、ぜひ読んでみてください。

実はスキル・技術が身につく

実は高卒工場勤務であっても、多くのスキル・技術を身につけられます。「ウチの工場でしか役に立たない知識だ」「単純作業しかやってない」と思っていても、他業種・他工場でも共通して使える基礎スキルが磨かれているケースが多いのです。具体的には次のとおりです。

  • 製造機器や切削加工機器などにおける基礎的な考え方・操作技術
  • スパナやモンキーなどの工具関係の知識や取り扱い技術
  • フォークリフト・リーチの運転技術
  • 溶接や切削などの工作系の技術
  • 電気、蒸気、エアーなどのエネルギー関係の知識や取り扱い方法
  • 電気工事士、エネルギー管理士、電気主任技術者などの資格(持っている人はポンポン転職してました)
  • 長時間工場勤務の業務を遂行できる体力、忍耐力、危機察知能力
  • 現場を取りまとめるリーダーシップ力やマネジメント能力
  • 3Kへの耐性力(意外と重要)

私は3つの食品工場で働き、出張で4~5つの工場を見学しました。稼働している機械や個々の技術、製品には大きな違いがあるものの、機械の駆動原理、作業動線の考え方、工場特有の課題や目標(生産目標や業務改善など)は、ある程度共通しています。また溶接・といった工作関係のスキルは、いずれの職場においても重宝されていました。

このように、きちんと洗い出せば工場勤務でも製造関係のスキル・技術が身についていることがわかると思います。「自分は思ったよりやれる人材だ!」と思うのもよし、「転職で活かせそうな力がたくさんあった」と自分を見つめ直す機会にするのもよしです。

Webライターあひる
一応私もアーク溶接もフォークリフト運転もできるので、良い反応をいただくこと多かったです(溶接も運転も苦手ですけど)。

深夜手当や休日手当などで手取りが増える

2交代制や3交代制を採用している工場だと、時差出勤や休日出勤が頻繁に発生します。時差出勤や休日出勤は割増賃金が適用されるので、定時出勤よりも手取りを増やすことが可能です。

とくに大きいのは深夜手当です。深夜手当は「22時から翌日5時までの深夜労働時間は、基礎賃金の25%以上の割増賃金を支払うこと」と、労働基準法にて最低基準が定められています。下回れば労働基準法違反です。つまり深夜帯で働けば、25%の割増が約束されています。さらに企業によっては夜勤手当を別途設定し、給料を上げてくれるケースがあります。

Webライターあひる
若干ややこしいのですが、深夜手当と夜勤手当は違うものです。まあ、夜勤手当があればさらに手取り増えてラッキーくらいの感覚で。

また残業中に夜勤の時間帯になったり休日出勤で夜勤をしたりすると、さらなる割増賃金をもらうことが可能です。休日出勤(35%以上)+夜勤手当(25%以上)の組み合わせだと、最低でもなんと60%の割増賃金です。夜勤がある工場だと、定時出勤の仕事よりも体を犠牲に稼ぎやすくなる可能性があります。

Webライターあひる
時差についてはフレックスタイム制度とかの概念があるのですが、ここでは省略。

意外と労働環境が整備されつつある

働き方改革の推進や安全対策の浸透によって、以前よりも工場の労働環境が整備されつつあります。私も10年間現場にいましたが、年々進む残業代の削減や安全対策によって、改善が進められていくのを肌で感じました。大企業や大企業の関連会社ほど、このような傾向が見られます。

鉄鋼業界の工場で働く知り合いも、今やほとんど残業がなくなり「むしろ残業したい」とボヤいています。新卒1年目は、月に何十時間もの残業や休日出勤で死にそうになっていたのに。

とはいえ、労働環境の良し悪しについては勤め先の工場の状況にもよります。それに、新規ライン立ち上げや新規設備導入、新製品テストのときは別。うまく行かない日々が続くと、「職場で暮らしてるんじゃないか」ってレベルでした(残業代・休日出勤手当や振替休日はちゃんとありましたが)。

Webライターあひる
今の時代はSNSの発展もあり、やばい労働環境を告発されたら一気に広まるので、ソーシャルリスクを避ける意味でも無茶な仕事は少なくなったのかも?

【嫌なものは嫌だ】高卒工場勤務の3つのデメリット

高卒工場勤務のデメリット

工場勤務にはメリットも多いですが、一方で看過できないさまざまなデメリットも存在します。高卒工場勤務のデメリットは主に次の3つです。

  1. 他の仕事より3K(きつい、汚い、危険)だし単純作業に飽きる
  2. 夜勤などの交代勤務がきつい
  3. 現場の空気感が合わないとトコトン合わない

ここからは、私も「嫌なものは嫌だ」と実際に感じた工場勤務のデメリットを解説します。

他の仕事より3K(きつい、汚い、危険)だし単純作業に飽きる

工場の労働環境は整備されつつあるとはいえ、他の仕事より3Kの環境であり体力勝負になる点は変わりません。身体の健康や、時差出勤による体調不良などをケアする必要があります。

また、工場勤務だと単純作業も多いので「飽きるしやりがいがない」「俺このままでいいのかなぁ…」とぼんやり考えてしまうことも珍しくありません。年数を重ねれば業務改善や設備導入の対応など任される仕事も多くなりますが、いわゆるルーティンワークと呼ばれる仕事は、管理職クラスにならない限りは担当し続けるのが一般的です。

夜勤などの交代勤務がきつい

3交代制を採用している工場だと、とにかく夜勤がきついというデメリットがあります。早番(朝5時出勤など)や遅番(昼14時出勤など)はまだマシですが、夜勤に関しては合わない人は本当に合わない(私はまったく合わなかった)。「今週早番、来週から夜勤」とかローテーションされると、体内時計を切り替える気力が必要になります。

一定期間交代勤務を続ければ、徐々に体が慣れるのも確かです。とはいえ、根本的に大変であることに変わりはありません。むしろ毎日交代勤務で大変な中、製品を世に送り出す工場勤務の方たちには凄いと今でも思います。

Webライターあひる
若い頃だと、友人や家族と予定が合わなくなるのも地味に嫌かもですね(孤独好きな私はそこまで気になりませんでしたが…)。

現場の空気感が合わないとトコトン合わない

高卒の工場勤務で働いている方ならなんとなくわかると思いますが、工場現場の雰囲気って結構独特です。大卒の人や事務仕事をしている人から見たら、異世界のように感じるのではないでしょうか。

他部署と連携することもありますが、工場勤務は基本的に担当部署・担当機械の範囲で黙々と作業する仕事です。そのため、人間関係も閉鎖的になりがちです。それに工場現場は「酒!女!ギャンブル!」といったオラオラ話題をする人も多いので、話についていけないと辛いかもしれません(私はその辺が合わなかったなーと)。

離れてみてどうだった?独立した高卒元工場勤務の所感

ここからはWebライターとして独立した高卒元工場勤務の筆者の立場から、製造業から離れてから感じた工場勤務についての所感を色々とまとめました。

収入確保や転職については安定感抜群

高卒であっても、工場勤務は働いて生きて行く上で安定感抜群の仕事だと思います。同じ工場への転職なら活かせるスキルも多いですし、私の場合は「3K職場で働いてきたから、多少身体が汚れる仕事でもなんとかなる」という精神的な安定を手に入れられました。

正社員・派遣社員・アルバイトいずれにおいても、求人の募集は常に見つけられます。スキル的にも、同じ工場への転職はかなり有利に働きます。工場で手に職をつければ収入を確保しやすく、食いっぱぐれることも少ないのかなと。Webライターを廃業してもなんとかなると思っているのは、工場勤務経験があるからですね。

ただし工場以外の他業界・職種の仕事へ転職したい場合だと、現場で培ったスキル・知識だけでは、少し心もとないのも事実。プライベートの時間での自己研鑽・自己投資や、現場内でのリーダシップ・マネジメント能力磨きなどが必要になるでしょう。

Webライターあひる
中小規模の工場勤務の友人も、今や家族も増えてマイホームも建てて幸せそうです(その分忙しそうです)。

将来的な独立を目指すなら副業などでスキル磨きが必要

高卒の工場勤務だと、独立(フリーランスになるなど)に関するスキルは、業務中に身につけるのが非常に難しいです。将来的な独立を目指すなら、「1.働きながら自己学習や副業でスキルを磨く」「2.貯金+退職金を十分に蓄えてから辞めて、自由になってから行動する」などが方法として挙げられます。

私は2を選んどいてなんですが、おすすめは断然1の働きながら頑張る選択肢です。2はよほど鈍感な人物か他に生活の柱がないと、焦燥感や不安で冷静な判断ができなくなります。

高卒工場勤務からの独立だと、独立前・後ともに苦労する点も多いと思います。しかし不可能とまでは言えないですし、残業が少ない工場に勤めているなら、やる気によっては時間を使ってチャンスを掴みやすいはずです。

Webライターあひる
工場勤務の友人の何人かは怪しい情報商材やマルチまがい商法に見事に引っかかったので、そのあたりは注意してくださいね
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工場勤務は誇ってよい仕事

工場現場から離れてみると、思ったよりも世間の風は、工場勤務者に対して冷たいと感じることが多いです。やはりデスクワークやキャリア仕事と比べると、工場勤務への評価は低いと感じるのが正直なところ。

でも、働いたからこそ言えますが工場勤務は誇ってよい仕事です。工場は私たちの生活や雇用を支える重要な役目を持っていますし、そこで働く人もくせが強くて面白い(嫌なヤローもいますけど)。知られていないだけで収入は手当分安定しているし、「モノを作る」という、目でも数値でも実感しやすいやりがいある仕事だと思います。スキルと資格を持っていれば、転職もわりとやりやすいのもメリットですね。

「俺なんかたかが工場勤務」と卑下する必要なありません。キャリアアップ・キャリアチェンジ・独立のいずれを目指す上でも、考え方や努力の方向性によって進みたい未来へ進める仕事になるでしょう。

Webライターあひる
とはいえ大変な仕事だし転職・独立も簡単ではないので、しんどいときは休んだりボーっとしたりすることも大事っす。

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