巷やインターネット上では、「高卒で工場勤務は底辺」「工場で働くなんて人生終わり」なんてまことしやかに囁かれています。実際、「今は工場で働いているけど、本当に今のままでいいんだろうか?」「もっと良い仕事はないだろうか」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
筆者は高卒でライン工の仕事を、同業種への転職も含めて約10年間経験しました。知り合いにも工場勤務の人が多いです。その筆者の結論としては、「3K(汚い・きつい・危険)は間違いないけど、待遇や労働環境は巷で言われるほど悪くない」ということです。実際、筆者自身はやりたいこと優先で退職しただけで、工場で働くこと自体は嫌いではありません(むしろ他の仕事より自分に合っていると感じています)。
本記事では、高卒工場勤務で転職・独立(現在はフリーランスWebライター6年目)も経験した筆者が、元同僚や友人の経験談も併せて、高卒の工場勤務の年収や出世事情、メリット・デメリットを解説します。工場勤務を続けるか悩んでいる方、工場勤務を辞めた人の体験談を知りたい方は、ぜひご覧ください。
Contents
意外と高収入?高卒工場勤務の年収などさまざまな疑問を解説
高卒工場勤務は、低年収や劣悪な労働環境などマイナスイメージを強く持たれることが珍しくありません。では、実際のところはどうなのでしょうか。まずは年収や労働環境など、高卒工場勤務についてのさまざまな疑問を解説します。
政府の統計データや筆者および筆者同僚・知り合いの経験談を基に解説しますが、100%の正解ではないので参考程度にお読みください。
【年齢別】データから見る高卒工場勤務の年収はいくら?
高卒工場勤務の平均年収は、439万900円だと推測されます。平均年収額は、厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」の「製造業従事者(企業規模計10人以上)」「高校」を基に算出しました。また今回は、製造業を工場勤務として計算しています。
製造業と全産業で、平均年収金額などのデータを比較したものが次の表です。
給与・年収 | 金額(製造業) | 金額(全産業) |
所定内給与額 | 27万3,500円 | 27万3,800円 |
きまって支給する 現金給与額 | 31万円 | 30万4,600円 |
年間賞与 その他特別給与額 | 87万900円 | 69万300円 |
平均賃金 | 372万円 | 365万5,200円 |
平均年収 | 459万900円 | 434万5,500円 |
- 所定内給与額:きまって支給する現金給与額から、残業代や時差手当などを差し引いた額
- きまって支給する現金給与額:基本給、各種手当、残業代を含む金額(6月に支給されたもの)
- 年間賞与その他特別給与額:調査実施年の前年1年間のボーナス
所定内給与額は「残業なしの収入」、きまって~は「残業代込みの収入」、年間賞与~は「ボーナス」のことです。続いて、年齢別の高卒製造業の平均年収も見ていきます。
年齢別 | 平均年収 (製造業) | 平均年収 (全産業) |
19歳まで | 259万900円 | 256万3,600円 |
20~24歳 | 339万7,800円 | 328万800円 |
25~29歳 | 381万8,300円 | 365万8,000円 |
30~34歳 | 431万7,300円 | 405万9,900円 |
35~39歳 | 464万9,900円 | 434万3,600円 |
40~44歳 | 498万7,800円 | 465万4,800円 |
45~49歳 | 525万900円 | 490万9,400円 |
50~54歳 | 533万6,600円 | 498万1,700円 |
55~59歳 | 543万3,200円 | 499万1,100円 |
60~64歳 | 387万4,700円 | 386万6,800円 |
65~69歳 | 305万7,600円 | 319万9,700円 |
70歳以上 | 282万9,600円 | 292万8,500円 |
意外にも、全産業平均と比較しても製造業のほうが年収が若干高い傾向が見られます。大卒の研究開発や設計、生産管理の仕事はデータに含まれていません。工場ごとの待遇に左右されるとはいえ、高卒工場勤務の年収として1つの参考になると思います。
高卒工場勤務の主な仕事は?
高卒工場勤務は、製造ラインといった現場での仕事がメインとなるケースがほとんどです。例えばライン作業やピッキングなどのTHE・工場勤務という仕事から、工務関係、品質管理などさまざまな業務が挙げられます。工場によっては、総務や経理などの事務系の仕事を高卒で採用するケースも見られます。主な仕事の例は次のとおりです。
- ライン作業:ベルトコンベアや配管などから流れてくる先の工程(上流工程のこと)の製品に対し、組立・加工・検査などを施し次の工程へ流す仕事
- ピッキング:倉庫内などで指示された製品や荷物をピックして集める仕事(軽作業でも重量物を扱うこともあるので、「軽」に騙されないように)
- 工務:工場のインフラ(電気、エアー、排水など)の管理や、製造ライン機器のメンテナンスを行う仕事
- 品質管理:製造ラインの安全衛生状態や製品の品質について管理・検証・指示をする仕事
- 事務系の仕事:工場の運営・製造をスムーズにするためにさまざまな作業をする総務や、工場全体の経費管理などのお金を管理する経理などの仕事
一方で、研究・開発や購買などの基礎学力が必要なポジションは、大卒以上の学歴の方が担当するのが一般的です。自分の周りだと、高卒からそちらの部署へ移動する人を見たことがありません。求人募集でも、大卒以上しか応募資格がないものがほとんどでした。
高卒工場勤務って出世できる?
前提として高卒の工場勤務が出世できるか否かは、他の仕事と同じく工場の人事体制や考え方に大きく左右されます。私や同僚、友人の話を聞いていると、工場の課長・部長クラスなら高卒でも登用されるケースが多いですね。
一方で、本社勤務や経営陣レベルになると、よほどのことがない限り出世が難しいイメージがあります。工場が新卒の高卒を採用する理由の多くは「工場現場の人材の補充・育成」なので、そっち方面で出世してエキスパートになってねってことだと思っています。とはいえ、中小企業だと経営陣や工場長になる人は珍しくありません(大企業クラスだと流石に厳しいかも)。
女性は工場勤務できる?
総務省「女性活躍の推進に関する政策評価―実地調査結果の中間公表―(2019年3月)」によると、製造業の女性の労働者比率は21.2%と、全産業平均よりも低いとの結果が出ています。とはいえ、正社員やアルバイトなどの雇用契約に関係なく、男性・女性のいずれも活躍しているのをよく見かけます。
女性でも工場勤務がやりやすいか否かは、職場の業務内容にもよるのかなと。
食品業界や衣服業界といった機械オペレーターや検査作業が多い業界だと、性別に関係なく工場勤務をしている方が多いようです。力仕事や体力仕事がどうしても多くなる鉄鋼業や金属関係の仕事は、男性の割合が増えます。
たとえば私が働いていた食品工場だと、力仕事が少ない(ないわけではない)製造現場や品質管理部門、バックオフィス部門では女性を男性と同じくらい採用していました。一方で私が配属されていた調合現場は力仕事が多かったので、女性の採用は少なかったです。
しかし、成分検査や配合表の担当は女性の先輩が担当者でした。2024年時点だと、同僚の転勤先や同僚の方々の中には、管理職に登用されている方もいらっしゃいます。
【誇りを持ってよし】高卒工場勤務の5つのメリット
高卒工場勤務のメリットとして、次の5つが挙げられます。
- 実はスキル・技術が身につく
- 夜勤手当や休日手当などで手取りが増える
- 意外と労働環境が整備されつつある
- コミュニケーションスキルがなくても働きやすい
- 高卒未経験からでも挑戦しやすい
「高卒工場勤務の自分に自信が持てない」「工場で働いてて何か良いことあるの?」と思う方は、ぜひ読んでみてください。
1.実はスキル・技術が身につく
実は高卒工場勤務であっても、多くのスキル・技術を身につけられます。「ウチの工場でしか役に立たない知識だ」「単純作業しかやってない」と思っていても、他業種・他工場でも共通して使える基礎スキルが磨かれているケースが多いのです。具体的には次のとおりです。
- 製造機器や切削加工機器などにおける基礎的な考え方・操作技術
- スパナやモンキーなどの工具関係の知識や取り扱い技術
- フォークリフト・リーチの運転技術
- 溶接や切削などの工作系の技術
- 電気、蒸気、エアーなどのエネルギー関係の知識や取り扱い方法
- 電気工事士、エネルギー管理士、電気主任技術者などの資格(持っている人はポンポン転職してました)
- 長時間工場勤務の業務を遂行できる体力、忍耐力、危機察知能力
- 現場を取りまとめるリーダーシップ力やマネジメント能力
- 3Kへの耐性力(意外と重要)
私は3つの食品工場で働き、出張で4~5つの工場を見学しました。稼働している機械や個々の技術、製品には大きな違いがあるものの、機械の駆動原理、作業動線の考え方、工場特有の課題や目標(生産目標や業務改善など)は、ある程度共通しています。また溶接・といった工作関係のスキルは、いずれの職場においても重宝されていました。
このように、きちんと洗い出せば工場勤務でも製造関係のスキル・技術が身についていることがわかると思います。「自分は思ったよりやれる人材だ!」と思うのもよし、「転職で活かせそうな力がたくさんあった」と自分を見つめ直す機会にするのもよしです。
2.深夜手当や休日手当などで手取りが増える
2交代制や3交代制を採用している工場だと、時差出勤や休日出勤が頻繁に発生します。時差出勤や休日出勤は割増賃金が適用されるので、定時出勤よりも手取りを増やすことが可能です。
とくに大きいのは深夜手当です。深夜手当は「22時から翌日5時までの深夜労働時間は、基礎賃金の25%以上の割増賃金を支払うこと」と、労働基準法にて最低基準が定められています。下回れば労働基準法違反です。つまり深夜帯で働けば、25%の割増が約束されています。さらに企業によっては夜勤手当を別途設定し、給料を上げてくれるケースがあります。
また残業中に夜勤の時間帯になったり休日出勤で夜勤をしたりすると、さらなる割増賃金をもらうことが可能です。休日出勤(35%以上)+夜勤手当(25%以上)の組み合わせだと、最低でもなんと60%の割増賃金です。夜勤がある工場だと、定時出勤の仕事よりも体を犠牲に稼ぎやすくなる可能性があります。
3.意外と労働環境が整備されつつある
働き方改革の推進や安全対策の浸透によって、以前よりも工場の労働環境が整備されつつあります。私も10年間現場にいましたが、年々進む残業代の削減や安全対策によって、改善が進められていくのを肌で感じました。大企業や大企業の関連会社ほど、このような傾向が見られます。
鉄鋼業界の工場で働く知り合いも、今やほとんど残業がなくなり「むしろ残業したい」とボヤいています。新卒1年目は、月に何十時間もの残業や休日出勤で死にそうになっていたのに。
とはいえ、労働環境の良し悪しについては勤め先の工場の状況にもよります。それに、新規ライン立ち上げや新規設備導入、新製品テストのときは別。うまく行かない日々が続くと、「職場で暮らしてるんじゃないか」ってレベルでした(残業代・休日出勤手当や振替休日はちゃんとありましたが)。
4.コミュニケーションスキルがなくても働きやすい
人と話すのが苦手な高卒者にとって、工場勤務はコミュニケーションスキルがなくても働きやすい環境として魅力的です。工場の仕事は、製造ラインの操作や品質管理といった現場作業が中心であり、サービス業や営業職のような対人での仕事ではありません。工場勤務のタスクは単独で完結することが多いため、同僚や上司との日常的なコミュニケーションが少なくて済むのです。
また、工場内の作業はプロセスが明確かつ繰り返し行われる作業が少なくなく、一度作業内容を理解すれば大筋の流れを理解しやすくなります。このためチームでの協力や頻繁な意思疎通が必要な他の仕事と比べて、コミュニケーションスキルの低さが障壁になりにくいのです。
とはいえ完全に要らないというわけではないので注意してください。仕事のやり取り上で最低限必要(引き継ぎ、作業指示、報連相など)な会話は、問題なくできるようにしましょう。
また、職場によっては会話が好きな方がいたり、飲み会などの業務外コミュニケーションを求める方がいたりなどするため、「会話が嫌いだから一切話さない」と拒絶せず距離感をうまく保つようにしましょう。
5.高卒未経験からでも挑戦しやすい
工場勤務は高卒者にとって敷居が低いことが大きなメリットです。多くの工場のライン作業は、特定の専門知識や技能を必要とせず、マニュアルに沿った平準的な仕事となっています。そのため高卒未経験の方でも、基本的な作業からスタートできます。職業経験がない高卒者にとって、自信を持って仕事に取り組みやすい環境と言えるでしょう。
また、工場勤務は一般的に体系的な研修制度が整っている場合が多く、未経験からでも仕事の流れや必要な技術を段階的に身につけやすいのメリットです。
【嫌なものは嫌だ】高卒工場勤務の4つのデメリット
工場勤務にはメリットも多いですが、一方で看過できないさまざまなデメリットも存在します。高卒工場勤務のデメリットは主に次の4つです。
- 他の仕事より3K(きつい、汚い、危険)だし単純作業に飽きる
- 夜勤などの交代勤務がきつい
- 現場の空気感が合わないとトコトン合わない
- 世間から底辺だと言われることがつらい
ここからは、私も「嫌なものは嫌だ」と実際に感じた工場勤務のデメリットを解説します。
1.他の仕事より3K(きつい、汚い、危険)だし単純作業に飽きる
工場の労働環境は整備されつつあるとはいえ、他の仕事より3Kの環境であり体力勝負になる点は変わりません。身体の健康や、時差出勤による体調不良などをケアする必要があります。
また、工場勤務だと単純作業も多いので「飽きるしやりがいがない」「俺このままでいいのかなぁ…」とぼんやり考えてしまうことも珍しくありません。年数を重ねれば業務改善や設備導入の対応など任される仕事も多くなりますが、いわゆるルーティンワークと呼ばれる仕事は、管理職クラスにならない限りは担当し続けるのが一般的です。
2.夜勤などの交代勤務がきつい
3交代制を採用している工場だと、とにかく夜勤がきついというデメリットがあります。早番(朝5時出勤など)や遅番(昼14時出勤など)はまだマシですが、夜勤に関しては合わない人は本当に合わない(私はまったく合わなかった)。「今週早番、来週から夜勤」とかローテーションされると、体内時計を切り替える気力が必要になります。
一定期間交代勤務を続ければ、徐々に体が慣れるのも確かです。とはいえ、根本的に大変であることに変わりはありません。むしろ毎日交代勤務で大変な中、製品を世に送り出す工場勤務の方たちには凄いと今でも思います。
3.現場の空気感が合わないとトコトン合わない
高卒の工場勤務で働いている方ならなんとなくわかると思いますが、工場現場の雰囲気って結構独特です。大卒の人や事務仕事をしている人から見たら、異世界のように感じるのではないでしょうか。
他部署と連携することもありますが、工場勤務は基本的に担当部署・担当機械の範囲で黙々と作業する仕事です。そのため、人間関係も閉鎖的になりがちです。それに工場現場は「酒!女!ギャンブル!」といったオラオラ話題をする人も多いので、話についていけないと辛いかもしれません(私はその辺が合わなかったなーと)。
4・世間から底辺だと言われることがつらい
多くの人から、「高卒の工場勤務は底辺だ」というレッテルを貼られることがあるのも高卒工場勤務のつらいところです。
しかし世間のイメージというものは強いので、個人の言葉だけでは払拭するのが難しいのも事実。高卒工場勤務が底辺と呼ばれる理由は次のとおりだと考えられます。
- 高学歴を重視する社会傾向があり、高卒は大卒よりも能力が低いと見なされがちだから
- 工場勤務者はオフィスワークに比べて低い給与を得るイメージが強く、低い社会的地位の象徴とされるから
- 工場勤務は出世・昇進の機会が限られているイメージから、長期的なキャリア展望が見込みにくいとされるから
- 単調な仕事であるというイメージがあり、創造性や自己実現の機会が少ないと思われているから
- テレビドラマや映画などのメディアでは工場勤務が低く評価される描写がされることもあり、世間のイメージとして定着しているから
実際のところこの見方は多角的な視点を欠いており、実際の職場環境や個々人の状況を考慮していないことも珍しくありません。とはいえ底辺と見られてしまいがちなのは事実なので、世間体やイメージを気にする方にとってはデメリットの要因になります。
工場勤務は底辺なのかどうかについては、別記事「工場勤務が底辺って本当?言われる理由やキャリアを実体験から考察」もぜひご覧ください。
【体験談】私が高卒工場勤務で働いていたときの年収・出世事情
筆者も高卒の工場勤務で約10年間働いていました。先ほどはデータや調査結果を基に客観的なお話をお伝えしましたが、ここからは私の体験談を基にした高卒工場勤務のリアルを紹介します。筆者の工場勤務の経歴は次のとおりです。
- 高校を卒業してすぐに食品工場へ入社
- 食品工場の規模は中の下くらいだが、親会社的なものが大企業
- 調合職場に配属で夜勤はなし(職場移動後は1年強程度夜勤経験あり)
年収は20代前半で300万円前後、20代後半で400万円程度
私が工場勤務していたときの年収は、20代前半で300万円前後、20代後半で400万円程度だったと記憶しています。ボーナスは夏と冬の2回で、合計100万円弱。
高卒工場勤務の中だと平均よりやや上くらいにもらっていたと思います。工場の規模が大きくなかったとはいえ、親会社的なもの(株式などの影響でちょっと複雑だった)がしっかりしていたからだと思います。とはいえ鉄鋼業やその他の業種に勤めていた同い年の人と比べると少ないというレベルです。当然ながら、同じ職場の大卒の方のほうが収入は圧倒的に上でした。
とはいえ一人暮らししていくには、困らない程度にはもらっています。勤め先は子ども手当やその他の福利厚生も完備されていたので、結婚する方も少なくありませんでした。
ちなみに大企業の食品工場へ入社した同級生は、私よりも年収は上です。今も現役で勤めていますが、「お前、結構もらってんなぁ…」と感嘆するレベルですね。
年功序列と実績で出世が決まる
私の勤め先の工場の場合、出世の決まり方は「年功序列はあるけど、実績や評価によっては覆る」という感じでした。年上でも実績や評価が芳しくない人がいれば、勢いのある若手のほうが早く出世します。
ただし、実績と評価にそこまで差がない限りは、年功序列が優先されやすいという人事です。また高卒の方は原則として現場での生産を中心にキャリアが組まれ、バックオフィス部門や本社への異動・転勤はほぼありませんでした。製造現場から工場の品質管理・生産技術への異動はたまに見かけましたが。
とはいえ、高卒から工場に勤めていて「自分は本気で本社に行きたいんだ!」と意気込んで行動する方はいなかったので、本気で対策すれば別のキャリアも歩めるルートはあったのかな?とは思います。
2024年現在、別の工場へ転勤となったかつての同僚たちのお話を聞くと、やはり製造現場畑の出身の方は製造関係のキャリアを進んでいるケースが多いです。一方で何人かは、製造現場からバックオフィスオフィスへ移動している方もおられました。
出世状況については、転勤先の工場によって異なるようです。すでに転勤先の工場の管理職が埋まっていたり管理職候補が何人もいたりするところは、出世は難しいっぽいです。一方で人手が足りなかったり現場のレベルが低かったりする工場へ転勤した方々は、高卒でも係長や主任になっているケースもあります。
離れてみてどうだった?独立した高卒元工場勤務の所感
ここからはWebライターとして独立した高卒元工場勤務の筆者の立場から、製造業から離れてから感じた工場勤務についての所感を色々とまとめました。
収入確保や転職については安定感抜群
高卒であっても、工場勤務は働いて生きて行く上で安定感抜群の仕事だと思います。同じ工場への転職なら活かせるスキルも多いですし、私の場合は「3K職場で働いてきたから、多少身体が汚れる仕事でもなんとかなる」という精神的な安定を手に入れられました。
正社員・派遣社員・アルバイトいずれにおいても、求人の募集は常に見つけられます。スキル的にも、同じ工場への転職はかなり有利に働きます。工場で手に職をつければ収入を確保しやすく、食いっぱぐれることも少ないのかなと。Webライターを廃業してもなんとかなると思っているのは、工場勤務経験があるからですね。
ただし工場以外の他業界・職種の仕事へ転職したい場合だと、現場で培ったスキル・知識だけでは、少し心もとないのも事実。プライベートの時間での自己研鑽・自己投資や、現場内でのリーダシップ・マネジメント能力磨きなどが必要になるでしょう。
将来的な独立を目指すなら副業などでスキル磨きが必要
高卒の工場勤務だと、独立(フリーランスになるなど)に関するスキルは、業務中に身につけるのが非常に難しいです。将来的な独立を目指すなら、「1.働きながら自己学習や副業でスキルを磨く」「2.貯金+退職金を十分に蓄えてから辞めて、自由になってから行動する」などが方法として挙げられます。
私は2を選んどいてなんですが、おすすめは断然1の働きながら頑張る選択肢です。2はよほど鈍感な人物か他に生活の柱がないと、焦燥感や不安で冷静な判断ができなくなります。
高卒工場勤務からの独立だと、独立前・後ともに苦労する点も多いと思います。しかし不可能とまでは言えないですし、残業が少ない工場に勤めているなら、やる気によっては時間を使ってチャンスを掴みやすいはずです。
工場勤務は誇ってよい仕事
工場現場から離れてみると、工場勤務者に対して思ったよりも世間の風が冷たいと感じることが多いです。やはりデスクワークやキャリア仕事と比べると、工場勤務への評価は低いと感じるのが正直なところ。
でも、働いたからこそ言えますが工場勤務は誇ってよい仕事です。工場は私たちの生活や雇用を支える重要な役目を持っていますし、そこで働く人もくせが強くて面白い(嫌なヤローもいますけど)。知られていないだけで収入は手当分安定しているし、「モノを作る」という、目でも数値でも実感しやすいやりがいある仕事だと思います。スキルと資格を持っていれば、転職もわりとやりやすいのもメリットですね。
「俺なんかたかが工場勤務」と卑下する必要なありません。キャリアアップ・キャリアチェンジ・独立のいずれを目指す上でも、考え方や努力の方向性によって進みたい未来へ進める仕事になるでしょう。
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高卒工場勤務に向いている人
「このまま高卒の工場勤務を続けるべきか」「高卒で工場勤務に就くべきか」など、高卒の工場勤務として働くことに悩んでいる方も多いと思います。
ここまで解説してきたとおり、工場での仕事は特定の技術や資格が必要ない場合も多く、未経験でも始めやすい特徴があります。一方で、製造機器関係や衛生管理関係のスキルや知識、管理関係の経験などが手に入る仕事です。
それでは、どのような人が高卒で工場勤務に適しているのでしょうか?
以下の5つのポイントから考察しました。
複数人の班の中で自分の役割をこなせる人
営業職やサービス業などと比較してコミュニケーション能力があまり必要ない工場勤務ですが、原則として班(チーム)で働くケースが多いです。例えば決まった人と長期間組むと決まっている工場や、よく一緒のシフトで入れられる人がいる場合など、工場ごとで変わります。
そのため、班の中での自分の役割(担当機械の操作、メンテナンスなど)をしっかりこなし、チームとして製造ラインをトラブルなく回すことが求められます。大規模な製造現場だと、1人の作業が手間取ると他の製造工程にも影響を及ぼすかもしれません。
「職場の人と仲良く」「面白い雑談をする」といった類のコミュニケーションではなく、お互いの仕事をこなしてカバーし合う協調性・連携意識が工場勤務には求められます。1人で黙々と作業しつつも、他の人の様子にも気を使って協力できる方は、工場勤務に向いているでしょう。
繰り返し作業に抵抗がない人
すべてではないものの、工場の多くの作業はルーティン作業の繰り返しが基本です。ルーティン作業が多いのは、同じ工程を何度も行うことによって効率化を図り、品質の安定を図るためです。
こうした繰り返し作業に対して飽きずに取り組める精神力がある人は、工場勤務に適しています。とくに、普段のルーティン作業の中で職場の問題点や改善点を考えられる方は、職場での評価も高められるでしょう。
細かな作業に集中できる人
工場作業には、細かい部品の組み立て・検査や原材料の混合、製造機械の数値の細かな確認など、単純作業の中にも集中力が求められる作業が多いです。
長時間同じ姿勢で集中して作業を続けることが苦にならない人は、工場勤務で高いパフォーマンスを発揮できます。
身体的な負担に耐えられる人
工場現場の作業は、身体的な負担が発生するケースも珍しくありません。職場によっては、重い物を持つ、長時間立ち仕事をするなど、体力を要する場面があります。
このような身体的な負担に耐えうる体力と健康がある人は、工場勤務に向いていると言えます。
安全意識が高い人
安全・衛生面での環境改善が進んでいる工場勤務とはいえ、製造機械への巻き込まれ、重量物持ち運び時の肩・腰への負担、現場での転倒などケガのリスクがいくつも潜んでいます。原因は工場の安全管理・対策が不十分なケースに加え、個人の安全確認不足、操作ミス、教育不足など、個人に起因するものもよくあります。
厚生労働省の「平成31年/令和元年労働災害発生状況の分析等」によると、製造業の死傷者は2万6,873人と全産業中一番多いです。
引用:厚生労働省「平成 31 年/令和元年労働災害発生状況の分析等」
ケガの割合は、年齢が高くなるほど発生率も大きくなっています。工場勤務では常にケガのリスクがあると考え、高い安全意識を持ちながら働ける人は工場勤務に向いている人だと言えるでしょう。
ものづくりや機械いじりが大好き
4つの「工場勤務に向いている人」をここまで解説しましたが、やはり一番は「ものづくりが大好き」と言える人だと思います。実際私も経験があるのですが、機械の力を借りつつも自分の仕事によってさまざまなモノが作られていくのを見るのは、非常に楽しいしやりがいがあるものです。
また工場勤務はさまざまな機械に触れる仕事であることから、機械操作やメンテナンスなど機械いじりが大好きな人も工場勤務に向いていると思います。
高卒工場勤務に向いていない人
「高卒後の工場勤務」という選択は多くの若者にとって魅力的な道ですが、工場勤務がすべての人に合うわけではありません。以下では、どのような人が工場勤務に向いていないかを個人的に考察しました。
- 班単位でのチームプレイが必要なときに自分の意見を優先し、仕事での他人との協調を難しく感じる人(プライベートの付き合いや仕事中の雑談は除く)
- 仕事中も人とコミュニケーションを積極的に取りたい人
- 営業職のような直接的な成果で評価される仕事がやりたい人
- 同じ工程を長時間続けることが求められるため、仕事に創造性や変化を求める性格の人
- 1つの作業への集中力が続かない人、苦痛を感じる人
- 長時間の立ち作業や重量物の取り扱い、工場内の騒音などといった身体的な負荷を強く感じやすい人
もちろん、これらはあくまで私が考える向いていない人であり正解ではありません。「工場で働いてみたい!」と強く感じているなら、ぜひ挑戦してみてください。
高卒工場勤務だって悪くない仕事
高卒工場勤務と聞くとネガティブな印象がありますが、年収面や労働環境面を見ると実は安定した仕事だとわかると思います。これからも引き続き工場現場で働きたい方、工場勤務から卒業したい方のいずれも、工場で働いた経験を活かして自分が進みたい方向へどんどん進んでください。
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