こんにちは。
昨日、サグーワークスのプラチナライター試験を受け、気力をほとんど持っていかれてしまった家鴨あひるです。@donotevergetold
あの内容を3時間、早いと1時間で済ます猛者がこの世にはいるのか。多分、私とは今まで書いてきた量と読んできた量が違うんだろうなとーと考察しています。
そんな、自分の弱さを痛感している私が、今回感想を書くのはこちら。
「日本人のための日本語文法入門(著 原沢伊都夫)」です。
その名の通り日本語文法の本なのですが、学校で習う「学校文法」とはまた違って、外国の方に日本語を教えるときに使う「日本語文法の理論」が書いてあります。
私はいつのまにこんな複雑で、そして日本人らしい言葉を使っていたんだなーと、少し日本語に対する違った見方を手に入れることができて面白かったです。
Contents
著者の原沢伊都夫氏について
著者は原沢伊都夫(はらさわいつお)氏。「どんな人なんだろう」とプロフィールを見ると、
「明治大学文学部卒業」「オーストラリア国立大学・グラジュエイト・ディプロマ(応用言語学)修了、同大学院修士課程(日本語応用言語学)修了」
「現在、静岡大学国際交流センター教授(日本語学専攻)」
まさに言葉のスペシャリストでした。いやいや、自分の無知が恥ずかしい……。
日本語検定の本の出版や、日本語についての論文発表なども行っており、日本人の中でもトップクラスに自国語を理解しているのではないでしょうか。
本書は200弱ほどのページ数ですが、内容はページ数以上のボリュームがあります。しかし、著者が図などを使って本当にわかりやすくしてくれており、私でも読み進めることができました。
でも内容自体はムズイ。中学で英文法の勉強のイメージに近いかもしれません。
実際英語の考え方も引用でバンバン出てくるので、ちょっと復習しておくと読みやすくなると思います。
あくまで日本語を「全世界にある言語の内のひとつ」と捉えているのですね。
日本語への新しい価値観が生まれた
日本語文の中心となるものは述語です。述語にいくつかの成分がついて、日本語文は構成されています。
「日本人のための日本語文法入門」(P12)より引用。
他の方の書評レビューを見ても、ほとんど関心を集めているのは、
日本語は「主題と解説である」の部分や、「述語が重要であり、主語はあくまで文の1成分」の部分です。
「主語が大切」という認識をバッサリ切ってきます。
あ、でも本を読んだらスッキリ理解できますよー。
こんな感じで、「主語も述語を説明するもの」だと頭に入れておくと、文章の添削をするときに役に立つかもしれません。
そういえば書籍「新しい文章力の教室(著 唐木元)」の中でも、「複雑になった文を簡単にするには後ろから、つまり述語から分解していくのが鉄則」と解説していたのですが、
これも「述語が日本語の中心」という発想があったからかも知れませんね。
主語と述語じゃなくて主題と解説として考える
主題というのは、その文のなかで話者が特に話題の中心として聞き手に伝えたいものです。(P38)
今回一番印象に残ったのがこの考え方です。
簡単に言えば、「が」と「は」を使い分けるだけで、その文の主役を決められるということになります。
始めは「?」と思いましたが、とりあえず読み進めることに。
たとえば、「あひるが家で本を読んでいる」だと、客観的事実を述べているだけ。
しかし、この文の「が」を「は」に変えると、「あひるは家で本を読んでいる」。
そして「あひるは~」以下の文字がすべて、あひるのことを解説するようになる、という考え方となります。
読んでも「?」だったのですが、その後のページの解説どおり、他のパーツを「は」やそれに準ずる助詞に変えて前に出してみると……(わかりやすく読点を付けます)
「家では、あひるが本を読んでいる」
「本は、あひるが家で読んでいる」
……なんとなく「は」以下の文章が、一番前の言葉を説明しているように見えませんか?
この「は」より前に出された言葉が文のテーマ、つまり「主題」として掲示され残りがすべて解説になる。
これが主語と述語ではなく、主題と解説という考え方なのですね。
私は理解した瞬間、「日本語おもしれぇ!」と感動しました。
たった一文字変えるだけで、こんなにも文全体の印象が変わるものなのかと。
複文の章はライターやブロガーにおすすめ
私達のコミュニケーションは単文だけでも十分に通じますが、より複雑な内容を伝えるためには、複数の文を組み合わせた高度な文を作る必要があります。この複数からなる文のことを複文と呼んでいます。(P174)
「〇〇は△△だ」は単文、「〇〇が△△なので、□□は☆☆だ」は複文。
この「単文」や「複文」というのは、市販の文章本ではあまり説明がないのですが、本書ではがっつり載っています。
本当にわかりやすく、そして詳しく解説しているので、私はこれからも勉強のため何度か読み返す予定です
とくに「連体修飾節」「名詞節」「副詞節」「引用節」、このあたりの解説を読むと、複雑な文を読み解くときの力になると思いますよ。
文を書くときも、この発想を頭に入れておくだけで、「自分はこの文でなにを説明したいのか」「この単文は、後ろの単文を解説しているのか」など、自分の文章を整理する時に役立ちます
私の場合、文章を書きはじめたころ「単文」と「複文」を改めて見直すことで、文章を見る目というか文字列世界の見方が変わりました。
意識しないでも使いこなせる方は多いですが、もし文章が思い通りに書けないという方がいれば、一度本書で日本語そのものを復習するのも一手かと思いますよ。
その他の要素はまた後日
本当は受動態などを表す「ボイス」、動詞の表現を変える「アスペクト」、過去形や未来形について語る「アスペクト」など、勉強になったことが多々あるのですが、文字数が多くなってきたので今回は割愛です。
後日、別記事で感想をあげたり、他の記事で引用したりなどでご紹介していこうかなと。
本当はこのあたりが本書のメインなのですが、まだ完全に理解したわけではないので、自分の中で消化できたらまた書いていくと思います。
もう少し「文法」そのものに目を向けても面白いのかも
おそらくですが、文法を完全に理解しても「ブログの文章が面白く書けるようになった!」「WEBライター仕事で修正依頼が少なくなった!」など、読まれる文章に効果があるかと言われれば微妙です。
実際WEB媒体で読まれる文章というのは、読み手が「知りたい!」と思っている文字列、共感や反感を呼ぶ熱い体験談やノウハウです。
文章そのものではなく、そこに宿る「書き手の気持ち」や「読み手が求める情報」など内容が絶対になります。
それでも、たった一文字変わるだけで意味合いが変化したり、日本人らしさが見え隠れしたりするこの「日本語文法」について、もっと知っていきたいなと思いました。
個人的にはそういった小さな文法の積み重ねの意識も、「個性ある文章」になる一つの要因なのかなと、あらためて思った家鴨あひるでした。