クラウドワークスを利用していると、「今後の継続案件は、サイトを通さず直接契約(直接取引)しませんか?」とメッセージが来ることがたまにあります。
言うまでもなくクラウドワークスの利用規約違反です。クラウドワークス上での取引を完了した後、同じクライアントと新しい契約する場合は再びクラウドワークス上で進める必要があります。当然ながら、クラウドワークスで案件を募集しておきながら、サービスを通さずに契約させようとするクライアントは規約違反です。
しかし中にはクラウドワークスで募集をかけた後、LINEやChatWorkへ誘導して契約内容を曖昧にしたまま仕事を依頼するクライアントも存在します。
とはいえ経験上、「規約の詳細を知らないだけで悪気がなかったパターン」もなきしにもあらずです。そのため、怪しむ前クライアントに確認してみてはいかがでしょうか。
本記事では、クラウドワークス(一応ランサーズも)などの「大手クラウドソーシング会社の直接契約」うんぬんについて、私の5年間の体験談も交えながら解説します。
また、実際にクラウドソーシングから直接契約への移行がバレるかどうかも考察しました。
Contents
前提は直接契約禁止|違約金やサービス外連絡申請などについて解説
クラウドワークスの上でのマッチングにもかかわらず、サービスを通さずに契約を結ぶことはクラウドワークス利用規約の第9条9項で禁じられています。
8. 会員間での連絡は、原則として本サービス内において行うものとします。但し、弊社が事前に承諾した場合はこれに限りません。
9. 会員又は過去5年以内に会員であった者は、会員又は過去5年以内に会員であった者と、本サービスを利用せずに、直接に本サービスを通じて委託可能な内容に関する業務委託契約を締結すること及びその勧誘をすることを行ってはならないものとします。但し、弊社が事前に承諾した場合はこの限りではありません。
簡単に言えば、「クラウドワークスを使った者同士は、5年経たないと直の業務委託契約できません」という規約です。規約違反は通知なしのサービス利用停止、登録解除、アクセス拒否、違約金支払いなど処置が取られます。
あと当然ながら、クラウドワークスで契約したにもかかわらず、クラウドワークスを介さず直接指定口座への報酬振り込み、クラウドワークス以外のサービスを使った報酬のやり取りも禁止です。
以下では直接契約に関する違反について詳細を見ていきましょう。
直接契約違反をすると違約金100万円!?
直接契約について書かれているクラウドワークス利用規約9条9項に違反し、その後直接契約が発覚するとシステム利用料相当額と100万円のどちらか大きい金額を、違約金としてクラウドワークスに支払わなければなりません。
5. 弊社は、利用者が第9条第9項又は第17条第6項に違反した場合、当該利用者の登録解除等弊社が必要と判断する措置を講ずることができるものとします。また、弊社は、利用者に対し、違約金として、当該取引の報酬額に対するシステム 利用料相当額か金100万円のいずれか大きい方の金額(当該取引の報酬額に対するシステム利用料相当額の算定が不可能な場合は、金100万円)の支払いを求めること及び一切の法的措置(金銭賠償請求を含むがこれに限りません。)を講ずることができるものとします。
同様の罰則に、第17条6項の「受発注間でサービスを通さずに、報酬を直接授受することを禁止」に違反するケースが挙げられます。
なかなか厳しい処分です。
とはいえ、これがまかり通るとクラウドワークスなどのクラウドソーシング側の売上がなくなってしまうので、厳しい違約金措置を規約に定めるのは間違いではないと思います。実際にクラウドワークスは「手数料が少なくなると運営するのが厳しくなる」と声明を出しています。
直接契約は一切を禁止しております。
直接契約が行われるとサイトの運営が困難になりますので、契約はクラウドワークス上で行うようお願いいたします。
ただ「利用手数料2割はでかい……」と思ってしまうのも、ライターやエンジニアの本音なはず(クラウドワークスは、獲得報酬の2割がサイト利用料として徴収される)。
そしてクライアントの中には、そんなフリーランスの心理を突き、「直接契約なら手数料かかりませんよ」とクラウドワークスを介さない契約を持ちかける者が存在します。そうしたケースでは仮払いなしで契約させ、バックレたり個人情報を不正に取得させたりなど、非常に悪いクライアントの場合が珍しくありません。クラウドワークスの仲介がないので、クラウドワークスに助けを求めることも叶いません。
不要なトラブルを避ける意味でも、注意しておきましょう。この場合はトラブルに巻き込まれても自己責任かつ自分で対応する必要があります。また、そもそも運営側が「本サービスを介さない直接取引を想起させると認めた依頼は禁止」と定めています。
他ブログやX(旧Twitter上)でも「クラウドワークス(ランサーズ)の取引から直接契約になりました!嬉しい!」と報告している人を見かけますが、これは「私は規約違反しています宣言」なので止めておいたほうがよいかと。せめてクローズドな場で身内の話に留めましょう。
ChatWorkなど外部連絡は「サービス外連絡申請」を行うこと
クラウドワークス上で交わされた契約に関するやり取りは、クラウドワークスのメッセージ機能を使うのが原則です。ただし、サービス外連絡申請を行い承認された場合は、クラウドワークス外での直接連絡が認められます。
サービス外連絡申請とは、やむを得ない事情により契約前・契約後にウェブ会議やオンラインでの打ち合わせ、クラウドワークスのサービス外での連絡が必要なときに、事務局へ直接連絡の許可を求めることです。
サービス外連絡申請をしないときは、クラウドワークス上でメッセージをやり取りしましょう。
(以前はサービス外連絡申請という仕組み自体なかったのですが、近年の詐欺案件や情報商材勧誘関係の取締強化の一環で、新しくサービス外連絡申請が新設されたようです)
私もいくつかのクライアントに関しては、サービス外連絡申請後にチャットワークやoutlookメールでのやり取りしてます。サービス外連絡申請は、契約画面上部にある「サービス外連絡申請」のボタンから誰でも簡単にできます。
↓ ↓ ↓
(出典:クラウドワークス)
結果が出るのは最大2営業日以内と遅くはないのですが、早めに申請しておいたほうが無難でしょう。
つまりサービス外の連絡がすべて規約違反というわけではなく、正式な手続きを踏めば問題ないということです。ただし、契約もせずいきなり不自然にLINEやChatWorkなどの外部ツールを使わせようとするクライアントには警戒が必要だと思います。そもそも仲介者を置き、削除できないメッセージを残して安心して取引できるのが、クラウドワークス利用者にとってのメリットなので。
初心者ワーカーは、LINEやChatWorkなどの閉ざされた空間だと、相手のペースにハマって不利な契約を締結させられる可能性が高くなります。サービス外の連絡が不安な場合は、仮払いを確認してからサービス外連絡をする、契約内容などのコアな内容はクラウドワークス上にメッセージを残してもらう、サービス外連絡は避けたい旨を伝えるなどの対策が必要です。
サービス外連絡申請についてはこちらから→「クラウドワークスよくある質問|【共通】「サービス外連絡申請」とは何ですか?」
【補足】クラウドワークスで直接雇用ってあり?どのような扱い?
クラウドワークス上で雇用契約を結ぶことは認められていません。サービス上で結ぶ契約は、必ず業務委託契約です。クライアントの指揮下に置かれる、時間や場所を拘束するといった契約は利用規約で禁止されています。
法律・法令・条例を順守していない仕事、犯罪や違法行為を肯定・助長するような仕事、雇用契約と判断されるような仕事の依頼を禁止しています。
(中略)
業務遂行の場所(勤務地)や時間の指定、常駐など、業務委託契約ではなく使用従属関係がある雇用契約と判断される可能性がある依頼
(中略)
正社員・契約社員・派遣社員・アルバイトなどの使用従属関係がある雇用契約で採用する、またはそれを前提として契約する依頼
引用:クラウドワークス|クラウドワークス仕事依頼ガイドライン
例えば「毎日〇時に集合して、担当者監視の下で仕事してください」や「アルバイトみたいな雇用契約です」と言われたら、利用規約違反として運営に相談しましょう。これは在宅勤務でも同じです。
クラウドワークスで直接契約(直接取引)したらバレる?
あくまで私の私見ですが、クラウドワークス上でマッチングした後に直接契約(直接取引)に移行した場合でも、運営側にバレるケースは少ないと考えられます。毎日のように膨大な量の取引を管理するクラウドワークス・ランサーズなどのクラウドソーシング会社としても、1つひとつの取引を見て直接契約に移行しているかをチェックするのは困難と言わざる得ません。
発覚するルートとして、クラウドワークス上に直接契約を匂わすメッセージを残してバレる、別ユーザーからの報告でバレる、SNS上で直接契約について発信してバレるなどが考えられます。無差別に取引を抽出して摘発するというより、自己開示や第三者からの報告など、ピンポイント発信によって運営が把握するケースのほうが多いと思われます(実際に契約違反で摘発された例は聞いたことはありませんが…)。
とはいえ、バレないからと直接契約に移行して発覚したときのペナルティは非常に大きいです。弁護士ドットコムの記事でも、「バレるケースは少ないが、バレたら立派な契約違反になる」と見解が示されています。
参考:弁護士ドットコム|「クラウドソーシング」経由の仕事を「直接取引」に移行、バレたら責任を問われる? – 弁護士ドットコム
ランサーズの利用規約|契約違反や違約金について
ランサーズとクラウドワークスの併用する人も多いと思うので、以下でランサーズの利用規約もご紹介しておきます。基本的にクラウドワークスとほぼ同じ内容です。最低違約金100万円などについて定められています。以下はランサーズ利用規約より。
第33条 本サイトの取引に関する禁止事項
本サイトを介さずに行う直接取引やそれを勧誘する行為、又は、勧誘に応じる行為。(本サービスで取引開始をした会員と再度取引する場合を含む)
第42条 違約金及び損害賠償等
会員が第33条第1項第12号に違反し、本サービスを介さずに直接取引(直接取引を誘引した場合、又は直接取引の誘因に応じた場合を含む)をした場合には、会員は前項に定める損害賠償金とは別に、違約金として、当該行為がなければ支払われていたと推定される第11条で定める弊社手数料の2倍に相当する金額(その額が100万円に満たない場合は100万円)を支払うものとします。
どうしても直接取引を望む場合は、第42条2号に「別途弊社の定める人材紹介契約等の必要な契約を締結し、当該契約に従うものとします。」とありました。普通に利用していると、そのような機会はなかなか訪れないとは思いますが…。
2024年時点で増えている悪質案件について
2024年現在では、低単価の悪質案件だけでなく情報商材やスクールの勧誘を目的とした悪質案件が増えています。実際にクラウドワークスからも「簡単なアンケートに見せかけた悪質案件にご注意ください」とアナウンスされている事態です。簡単にまとめると次のとおりです。
- クラウドワークスの募集・スカウトで「簡単にできる副業」や「報酬を受け取りながら学べる」などと称しアンケートやモニターを勧められる
- 一旦は低単価で契約させ、LINEなどのサービス外での連絡を行わせる
- ケースによっては副業説明会やセミナーなどへの参加を促される
- その後MLM(マルチレベルマーケティング、新しく加盟者・購入者を勧誘すると勧誘者が儲かる仕組み、いわゆるマルチ商法)や高額スクール、高額情報教材の購入を強く勧められる
上記のような悪質案件から相談がきた場合は、スルーや事務局への通報を行いましょう。もし契約して途中で気づいた場合は、契約途中終了リクエストを送信してください。お金を支払ってしまった場合は民事や刑事に発展する可能性があります。そうなる前の自己防衛が大切です。
悪質なクライアントか否かを見極めるには文面や評価を見ること
直接契約を持ちかけてくるクライアントが悪質なケースは多々あります。でも、中には「規約について本当に知りませんでした。申し訳ございません」と、単に把握していなかったパターンも体験しました。
やり取りや対応も素晴らしい企業様だったので、少しびっくりしたレベル。規約についてきちんと説明すると、これまた大変丁寧な返信と理解を得られました。
規約の読みづらさや登録の手軽さから、ついつい見逃してクライアント(フリーランスやライター側も)も確かにいます。なので、「直接契約を持ちかける=絶対悪」と決めつけてしまうのも、少し早計かもしれません。
「直接契約禁止ですよ」と指摘した後、そのまま連絡が途絶えたクライアントもありますケド…。
では、何を持って信頼性を判断すればよいのか。私の主観ではありますが、簡単な対策方法を解説します。
依頼クライアントの評価や掲載元が明確かどうか
一番に見るべきは「クライアントの知名度と信頼性」です。
Webページやコンテンツを持つ企業であれば、そのページをくまなくチェックします。規模やサイト設計、販売コンテンツ等を見ながら、信用すべきか判断していますね。もしくは会社名をGoogle検索し評判を見てみます。
もしWebページがない、掲載先ページが不明瞭な場合は、クラウドワークス上のクライアントの評価のチェックを行いましょう。
5点満点の数値だけでなく、「誰が評価しているか(ベテランが評価しているか)」「評価者からのメッセージの内容はどうか」まで確認します。数値は数値なので、血の通った生の情報を得るのが大切だと思います。
あえてストレートに表現すれば、ライター初心者と、中堅・ベテランライターの意見のどちらの方が信頼できるか、という話ですね。具体的な注目点をまとめました。
- 評価している人はベテランライターか初心者ライターか(正しく評価しているか)
- 詳細な評価メッセージには何が記載されているか(具体的に良い部分、逆にダメな部分が書いてあるメッセージを読む)
- 過去にどんな案件の仕事を募集しているか(単価や作業内容はもちろん、初心者狙い撃ちの大量募集を何度もかけていないか)
個人的によく見るのはこのあたりです。
過去の依頼内容がはっきりしない、低単価で何度も募集している、何度も大量募集をしているのにプロジェクト完了率が明らかに低いなどが見られるとちょっと契約する躊躇します。
逆に過去の実績がまったくなくても、やり取りや募集文の誠実さ、掲載元の明示がしっかりしていたクライアントとの取引は問題なくできました。条件もよく、2024年2月現在もクラウドワークス・ランサーズにて継続案件いただいています。
メッセージのやり取りや募集要項からから
少し抽象的なのですが、メッセージのレスポンスが遅かったり、文面がライターを舐めている感じだったりする場合、あまり良い取引にならない可能性があります。とくに依頼文が「ライター様」のプロフィールを見てなど、名前の部分を曖昧にぼかしてるやつ。多分、プロフィールを見ず無差別に送ってます。
これらに明確な根拠はないのですが、自分自身の経験や、SNS上で発信する多くの他ライター様の意見です。ぶっちゃけ、自分の直感を信じろっちゅー話ですね。
具体的なところを言えば、メールや仕事の募集要項に以下の情報が記載していれば、ビジネスマナー的にはまだ信頼できるかなと個人的に思います。具体的には次のとおりです。
- 企業名とWebページのURL
- 記事の公開先(オウンドメディア)のURL
- 詳細な連絡先
- 営業時間などの情報
とはいえ逆に大企業になると、フリーランスを舐めて雑な対応が目立つこともあると聞きました。こういう情報は、クラウドワークスやランサーズの上位ライターのTwitterをフォローして、つぶやきの内容で判断したほうがいいかもです。
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まとめ
フリーランスはこの身一つで取引を行うことから、なにが良くて何が悪いかを自分で判断しなければなりません。
多少グレーな案件でも、自分の収入や実績を秤にかけて、契約すべきか思い悩む日々も正直あると思います。私は聖人君主ではないので、世の中の成功者がすべて、健全クリーン経営で成功しているとも思っていませんし…。
1つ言えるのは法律や倫理に反する仕事だけは、絶対に避けるようにすべきでしょう。
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