「工場勤務って、やっぱり底辺なのだろうか」「高卒で工場に入った自分は、世間的に見て下のほうなのかもしれない」
高卒でそのまま工場勤務に就いた場合は、大学に進学した同級生と比べてしまったり、SNSや掲示板の心ない言葉が気になったりして、「自分の選択は間違っていたのではないか」と不安になりやすいものです。
筆者自身も、元高卒工場勤務として働いていた頃、「工場は底辺」「高卒はきつい」といった偏見めいた言葉を見聞きして、モヤモヤしたことがありました。
しかし、実際に現場で働いた立場から言えば、工場勤務そのものが底辺というわけではありません。その一方で、怒鳴る文化がある、教育が雑、残業が多いのに給料が見合わないといった、しんどい職場があるのも事実です。
つまり、「工場勤務=底辺」と一括りにするのではなく、仕事の実態や職場ごとの差を見て判断することが大切です。
この記事では、工場勤務が底辺と言われやすい理由、高卒だとそう感じやすい背景、底辺扱いされやすい職場の特徴、そして工場勤務がつらいときの現実的な対処法まで、元高卒工場勤務の筆者の体験も交えながら解説します。
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工場勤務は底辺なのか?元高卒工場勤務の筆者の結論
「工場勤務は底辺なのか」と聞かれたとき、元高卒工場勤務の筆者としての結論を先にお伝えすると、工場勤務そのものが底辺というわけではありません。
実際、製造業は日本の雇用を支える大きな産業の1つであり、総務省統計局の労働力調査では、2025年平均の製造業就業者数は1,033万人とされています。決して一部の人だけが就く特殊な仕事ではなく、多くの人が生活を支えるために働いている主要な仕事なのです。
また、高卒就職そのものも珍しい進路ではありません。厚生労働省が公表した、令和7年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」では、9月末時点の求人倍率は3.94倍となっており、高卒で働く道自体が特別に後ろ向きな選択というわけでもないでしょう。
ただ、その一方で、工場勤務には「単純作業」「きつい」「学歴がなくても入れる」といったイメージがつきまといやすく、世間から雑に見下されることがあるのも事実です。
私自身も高卒で工場に入っていた頃、「工場は底辺」「頭を使わない仕事」といった言葉を見聞きしたことがありました。現場で真面目に働いている人ほど、こうした言葉に傷ついてしまうものです。
しかし、実際に現場で働いた立場から言えば、工場勤務はそんな単純な話ではありません。楽な職場ばかりではないですし、逆に「底辺」と一括りにするには無理がある職場もたくさんあります。
工場勤務そのものが底辺なのではなく、偏見を持たれやすい仕事である
工場勤務が底辺扱いされやすいのは、仕事の実態というより、昔からのイメージや偏見が大きいと筆者は感じています。
たしかに工場には、立ち仕事が多い、単純作業に見えやすい、空調や臭いのきつい現場がある、といった特徴があります。そのため、外から見た人に「誰でもできる仕事」「大変なわりに報われない仕事」と誤解されやすいのでしょう。
しかし、実際の工場では、ただ手を動かすだけで終わる仕事ばかりではありません。製品の品質を保つために細かい確認が必要だったり、ラインを止めないために周囲との連携が必要だったり、安全面に神経を使ったりと、地味でも気を抜けない仕事が多くあります。工場勤務は「見た目で軽く見られやすい仕事」ではあっても、それだけで価値の低い仕事とは言えません。
社会に食品や工業製品が安定して供給されるのは、現場で働く人がいるからです。少なくとも、仕事の中身を知らずに「底辺」と決めつけるのは、かなり乱暴だと思います。
ただし、実際に「きつい・待遇が悪い」職場があるのも事実
とはいえ、「偏見だから気にしなくていい」で片付けられないのも事実です。工場勤務のなかには、実際にきつい職場や、待遇に不満を持ちやすい職場があります。
たとえば、残業や休日出勤が多いのに給料があまり伸びない、教育が雑で新人が怒鳴られやすい、人の入れ替わりが激しい、安全や空調への配慮が弱い、といった職場に当たると、「底辺と言われても仕方ないのでは」と感じてしまう人が出てきます。これは働く人の能力や学歴の問題ではなく、単純に職場環境の問題です。
実際、高卒就職者のなかには、就職後3年以内に離職する人も一定数います。厚生労働省の「新規高卒就職者の産業別離職状況」によると、以下の結果が出ています。
- 製造業:令和4年3月卒の就職者数57,193に対して、3年目までの離職者数は16,358で約28.6%と3割近く
- 食料品製造業:令和4年3月卒の就職者数8,968に対して、3年目までの離職者数は3,805と約42.4%と4割超
もちろん、すべての工場が離職しやすいという意味ではありませんが、高卒で製造業に就職した人のなかには、早い段階で職場とのミスマッチを感じて離職するケースが一定数あることはうかがえます。
また、製造業は安全管理が非常に重要な業種でもあります。現場仕事だからこそ、体力的なきつさや労働災害のリスクがあり、安全配慮が不十分な職場では働きやすさが大きく下がります。つまり、「現場仕事だからしんどい部分がある」のは事実です。
だからこそ、「工場勤務は底辺ではない」と言うとしても、何もかも美化するつもりはありません。実際にしんどい工場、長く働くには厳しい工場があるのは事実であり、その点は現場経験者として正直にお伝えしたいところです。
大切なのは「工場勤務=底辺」と決めつけることではなく、職場ごとの差を見極めること
筆者がいちばん伝えたいのは、「工場勤務」という大きなくくりで良し悪しを判断しないほうがよいということです。
同じ工場勤務でも、会社の規模、扱う製品、配属工程、上司の人柄、教育体制、夜勤の有無によって、働きやすさは驚くほど変わります。高卒で入れる工場だからダメなのではなく、待遇や環境が悪い職場に入ってしまうと苦しくなりやすい、というほうが実態に近いでしょう。
そのため、「工場勤務は底辺か」と悩んだときに考えるべきなのは、仕事そのものの肩書きではありません。見るべきなのは、今の職場が人を育てる気のある職場か、給料や安全面に納得できるか、長く続けられる環境かどうかです。
工場勤務というだけで自分を低く見る必要はありません。ただし、今いる職場に強い違和感があるなら、「自分が底辺なのか」と悩むより、職場環境を見直すほうがずっと建設的です。ここを混同しないことが大切だと、元高卒工場勤務の筆者は考えています。
工場勤務が底辺と言われやすい理由
工場勤務が「底辺」と言われやすいのは、実際に現場で働く人の能力や人間性に問題があるからではありません。そう見られやすいのは、仕事内容に対する古いイメージや、一部の労働環境の悪い職場の印象が強く残っているからです。
それでも「底辺」という強い言葉で検索されるのは、仕事の中身そのものよりも、外から見た印象や世間の偏見が先行しやすいからでしょう。ここでは、工場勤務が底辺と言われやすい代表的な理由を整理していきます。
単純作業・流れ作業のイメージが強いから
工場勤務が底辺扱いされやすい理由として、まず挙げられるのが「単純作業の仕事」というイメージです。
工場と聞くと、ベルトコンベアで流れてくる製品に同じ作業を繰り返す、いわゆるライン作業を思い浮かべる方は多いでしょう。実際、そうした工程があるのは事実です。そのため、外から見た人には「頭を使わなくてもできそう」「ただ同じ作業をしているだけ」と思われやすくなります。
しかし、現場で働いた経験から言えば、単純に見える作業ほど集中力や正確さが求められることは珍しくありません。少しの確認漏れや手順ミスが、不良品の発生やライン停止につながることもあります。見た目は地味でも、実際には気を抜きにくい仕事です。
それでも「流れ作業=誰でもできる簡単な仕事」というイメージが先に立つため、工場勤務は軽く見られやすいのだと思います。
3Kの印象が根強く残っているから
工場勤務には、今でも「きつい・汚い・危険」という、いわゆる3Kの印象が根強く残っています。
たしかに工場のなかには、立ちっぱなしで体力を使う現場、油や機械音が気になる現場、暑さや寒さの影響を受けやすい現場があります。
また、製造業では安全管理が非常に重要であり、実際に労働災害も発生しているため、「危険そう」という印象が持たれやすいのも無理はありません。
厚生労働省の職業情報サイトでも、工場労務作業員は「工場内で原材料の搬入や製品・商品の搬出、各種機械の清掃や燃料の補給、廃棄物分別、構内清掃など各種作業を行う」と紹介されています。
たとえば、筆者が以前いた現場でも、次のように3Kを感じやすい場面がありました。
- 脱脂粉乳、植物油、カカオパウダー、香料など粉末や匂いの強い液体を扱う
- 20kgや30kgなどの重量物の運搬や投入を行う
- アルカリ洗剤や酸洗剤を取り扱う
- 数千kg単位の空タンクに入って手洗浄する
ただし、ここで大切なのは、3Kの印象があることと、働く人の価値が低いことはまったく別だという点です。
しんどさや危険性がある仕事だからこそ、むしろ現場では真面目さや注意力が求められます。それでも昔ながらの「工場=3K」という印象が強いため、底辺という乱暴な見方につながってしまいやすいのでしょう。
学歴不問の求人が多く、高卒でも入りやすい仕事と思われやすいから
工場勤務は、学歴不問や未経験歓迎の求人が比較的多いため、「学歴が高くない人が行く仕事」という偏見を持たれやすい傾向があります。
これは厚生労働省の職業情報サイトを見ても、工場労務作業員は学歴を問わず就職先として想定される職種の1つとして紹介されています。あくまで参考程度ですが、学歴別の工場労務作業員の割合を見ていきましょう。

本来は「高卒でも入りやすい」ということと、「底辺の仕事」であることはまったく別問題です。入口が広い仕事は、未経験から働き始めやすいというメリットでもあります。
にもかかわらず、学歴不問というだけで「学歴がない人の受け皿」と雑に見られてしまうため、工場勤務は底辺扱いされやすいのだと思います。
とくに、高卒で工場に入った人ほど、この偏見を真正面から受けやすいでしょう。仕事そのものより、「高卒」「工場」という言葉の組み合わせで見下される感覚を持ちやすいのは、このためです。
給料が安い、将来性が低いと思われがちだから
工場勤務が底辺と言われやすい理由として、「給料が安そう」「将来もずっと同じ仕事をするだけ」と思われやすいことも挙げられます。
たしかに、工場勤務には賃金が高いとは言いにくい職場もありますし、昇給幅が小さい会社や、残業頼みで収入を確保している職場もあります。
例えば、厚生労働省「職業情報サイト」によると、工場労務作業員の平均年収は345万4,000円です。
こうした現実がある以上、「給料が安い」「先が見えにくい」という不安を抱く人が出るのは自然でしょう。
ただし、これも工場勤務全体を一括りにして語れる話ではありません。大手メーカーや待遇の安定した工場もあれば、資格取得や工程責任者、設備保全、品質管理などに広がっていく職場もあります。
大手飲料工場の管理職に就いている筆者の知人や私の昔の同僚は、高卒でも年収600万円以上の人が何人もいます。
つまり、「給料が安い・将来性が低い」と決めつけるよりも、どんな会社でどんな仕事をするかを見るほうが実態に近いです。
それでも、外から見ると違いが分かりにくいため、「工場はどこも給料が低く、先がない」という雑なイメージで見られやすいのでしょう。
誰でもできる仕事だと誤解されやすいから
工場勤務は「資格がなくても始められる」「学歴不問の求人がある」という理由から、誰でもできる仕事だと誤解されやすい面があります。
しかし、実際の現場では、単に手を動かすだけでは済まない仕事が少なくありません。生産計画や品質確認、工程管理、機械操作、異常時の対応など、工程によって求められる知識や判断力はかなり違います。
また、検査工程でも、製品が規格どおりかどうかを確認するために、外観・品質・機能などを細かく見る仕事が求められます。こうした仕事を見れば、工場勤務が単なる「誰でもできる仕事」ではないことは分かるはずです。
それでも、現場の細かい苦労や責任は外から見えにくいため、「とりあえず工場なら誰でもできる」と誤解されがちです。この誤解が、工場勤務を底辺扱いする偏見につながっているのだと思います。
電験3種やエネルギー管理士などの難関資格を取得すれば、より高い年収の工場への転職も現実的になるでしょう。
高卒で工場勤務をしていると「底辺かも」と感じやすい理由
高卒で工場勤務をしている人のなかには、仕事そのものよりも、「この働き方をしている自分は世間からどう見られているのだろう」と悩んでしまう人も少なくありません。
実際、工場勤務が底辺かどうかは職場環境や働き方によって大きく変わります。それにもかかわらず、高卒で工場に勤めていると、それだけで自分を低く見てしまいやすい場面があります。
筆者自身も高卒で工場勤務をしていた頃、仕事のきつさそのものより、「このままでよいのだろうか」「もっと別の道があったのではないか」と感じる瞬間が何度もありました。
ここでは、高卒で工場勤務をしていると「底辺かも」と感じやすい理由を、実体験も踏まえながら整理していきます。
大学進学した同級生と比べてしまいやすいから
高卒で工場勤務をしていると、「大学に進学した同級生や先輩後輩」と自分を比べてしまいがちです。
高校を卒業してすぐ働き始めると、自分は毎日フルタイムで現場に出ている一方で、同級生は大学生活を送り、サークルやアルバイト、就活などを経験していきます。
その様子をSNSで見たり、久しぶりに話を聞いたりすると、「自分だけ早く社会に出て、選択肢の少ない道に入ってしまったのではないか」と感じやすくなります。
とくに工場勤務は、スーツを着る仕事やオフィスワークに比べて、外から見ると華やかさが伝わりにくい仕事です。そのため、仕事内容そのものよりも、「見た目の印象の差」で劣等感を抱いてしまうことがあります。
しかし、これは工場勤務が底辺だからというより、進学組と就職組で生活の見え方が違いすぎることが大きいと筆者は感じています。働いてお金を稼ぎ、社会を支えている時点で、何も恥じる必要はありません。それでも比べてしまいやすいのが、高卒就職のしんどいところです。
高卒で就ける仕事が限られているように感じやすいから
高卒で工場勤務をしていると、「自分には他の仕事がないのではないか」と感じやすいこともあります。
実際、高卒向け求人では、製造業、物流、接客、介護、営業などが目立ちやすく、いわゆる大卒向け総合職や専門職に比べると、選べる仕事が少なく見えることがあります。
すると、「工場勤務を辞めても、どうせ似たような仕事しかないだろう」と考えてしまい、今の仕事に不満があっても身動きが取りにくくなります。
この感覚が強くなると、「工場勤務を選んだ自分が悪い」「高卒だからこういう仕事しかできない」と、自分の価値まで低く見積もってしまいがちです。
現実問題として、求人票や周囲の空気のなかで学歴フィルターのようなものを意識しやすいため、高卒で工場勤務をしている人ほど、「自分は底辺側の人間なのでは」と思い込みやすいのでしょう。
職場と家の往復で将来の変化が見えにくくなるから
工場勤務は、配属された工程や勤務時間によっては、毎日の生活がかなり単調になりやすい仕事です。
朝起きて出勤し、同じ作業や似た工程をこなし、帰って寝てまた出勤する。このサイクルが続くと、生活は安定しやすい反面、「自分が成長している感覚」や「将来が変わっていく感覚」を持ちにくくなることがあります。
とくに高卒でそのまま就職すると、進学や転職を経て環境が変わる同世代と違い、20代前半の数年間がかなり似た毎日になりやすいです。そうすると、「自分だけ時間が止まっているような気がする」「このままずっと同じ人生なのではないか」と不安になりやすくなります。
こうした閉塞感が強くなると、仕事の中身以上に、「この働き方をしている自分は底辺かもしれない」と感じやすくなってしまいます。
SNSや掲示板の「高卒・工場は底辺」という言葉が刺さりやすいから
高卒で工場勤務をしている人にとって、SNSや掲示板の心ない言葉が刺さりやすいのも大きな理由です。
インターネット上では、「高卒は負け組」「工場は底辺」「誰でもできる仕事」といった極端な言葉が、冗談半分やマウント目的で書かれていることがあります。こうした言葉は、普段なら気にしないつもりでも、自分のなかに少しでも不安があると強く残ってしまうものです。
とくに、高卒と工場勤務はどちらも世間の偏見を向けられやすい要素です。その2つが重なると、実際の仕事内容や収入、職場環境とは関係なく、「やはり自分は下に見られる立場なのか」と感じてしまいやすくなります。
しかも、SNSや掲示板では、その仕事で真面目に働いている人の事情までは考慮されません。きつい現場を支えている人も、生活のために働いている人も、一括りにして雑に扱われがちです。そのため、現実よりも強い言葉だけが頭に残り、「底辺かも」という感覚を余計に深めてしまうのでしょう。
筆者としては、ネット上の乱暴な言葉をそのまま自分の価値に結びつける必要はないと思っています。問題なのは、高卒や工場勤務という肩書きそのものではなく、今の職場環境や働き方に納得できているかどうかです。そこを切り分けて考えないと、必要以上に自分を追い込んでしまいます。
元高卒工場勤務の筆者が感じた「底辺扱いされやすい職場」の特徴
工場勤務そのものが底辺なのではなく、実際には「底辺扱いされやすい職場環境」に問題があるケースが多いと筆者は感じています。
ここでは、元高卒工場勤務の立場から見て、「この職場はしんどい」と感じやすい特徴を整理します。
怒鳴る文化が当たり前になっている
ミスや作業遅れに対して怒鳴るのが普通になっている職場は、かなり働きにくいです。現場が忙しいのは事実ですが、怒鳴る文化が根付いている職場は人が育ちにくく、萎縮してさらにミスが増えやすくなります。
新人教育が雑で、できない人をすぐ切り捨てる
工場の仕事は、慣れるまでは誰でも戸惑います。それなのに、十分に教えず「見て覚えろ」で済ませたり、少しミスしただけで見放したりする職場は危険です。こうした環境では、新人ほど「自分がダメなんだ」と思い込みやすくなります。
残業や休日出勤が多いのに給料が見合わない
拘束時間が長いのに収入がそれほど伸びない職場では、不満がたまりやすいです。特に、残業や休日出勤が常態化しているのに生活が楽にならないと、「きついだけの仕事」と感じやすくなります。
人の入れ替わりが激しく、いつも人手不足である
いつも誰かが辞めていて、常に人が足りない職場も要注意です。人手不足の職場では、一人あたりの負担が増えやすく、教育も雑になりがちです。その結果、さらに人が定着しない悪循環に陥りやすくなります。
衛生面・安全面・空調面への配慮が弱い
工場では、衛生管理や安全管理、暑さ寒さへの配慮がとても大切です。それにもかかわらず、現場環境への配慮が弱い職場は、体力的にも精神的にもかなり消耗しやすくなります。こうした職場で働くと、「工場勤務は底辺なのでは」と感じてしまいやすいでしょう。
工場勤務が底辺とは言い切れない理由
工場勤務を一括りにして「底辺」と断定するのも乱暴です。実際には、働く環境や会社次第で印象は大きく変わります。
高卒・未経験からでも正社員を目指しやすいから
工場勤務は、高卒や未経験でも正社員として採用されるチャンスが比較的多い仕事です。入口が広いことは、見方を変えれば「社会に入りやすい仕事」とも言えます。学歴や職歴に自信がない人にとっては、大きなメリットです。
資格・経験・担当工程によって評価が変わるから
工場勤務は、どの工程でもまったく同じというわけではありません。資格を取ったり、難しい工程や管理業務を任されたりすることで、職場での評価や役割が変わることもあります。「誰でも同じ仕事をして終わり」とは限りません。
大手や優良企業では待遇が安定しているケースも多いから
工場勤務のなかには、給与や福利厚生、教育体制がしっかりしている会社もあります。特に大手メーカーや優良企業では、世間の「工場は全部きつい」というイメージに当てはまらないケースも珍しくありません。
黙々と作業する働き方が合う人には適職になり得るから
人と頻繁に話す仕事よりも、目の前の作業に集中する働き方が向いている人もいます。そうした人にとって工場勤務は、むしろ働きやすい仕事になり得ます。向き不向きがある以上、「工場勤務=底辺」と決めつけるのは適切ではないでしょう。
高卒のまま工場勤務を続けてよい人・環境を変えたほうがよい人
高卒で工場勤務をしていると、「このまま続けてよいのだろうか」と悩むこともあると思います。
しかし、工場勤務そのものが悪いわけではなく、向いている人もいれば、今の職場から離れたほうがよい人もいます。大切なのは、肩書きだけで判断するのではなく、自分と職場の相性を冷静に見ることです。
工場勤務を続けてもよい人の特徴
工場勤務を続けてもよい人の特徴としては、まず作業を着実にこなすことが苦にならず、現場の働き方に大きなストレスを感じていないことが挙げられます。
工場勤務を続けてもよい人の特徴は、次の通りです。
- 黙々と作業するほうが性に合っている人
- 体を動かす仕事のほうが楽な人
- 職場の人間関係や待遇に大きな不満がない人
- 今の職場で昇給の見込みがある
- 資格取得や工程変更のチャンスがある
- 正社員として安定して働けている
工場勤務が向いている人にとっては、無理に華やかな仕事へ行くより、現場で力を付けたほうが合っていることもあります。「SNSで華やかな生活を見て憧れた」といった安易な理由で、工場を辞めることは避けたほうが無難です。
飲食工場に勤める知人の後輩は、「先のことは考えていないけど、とにかく辞めたい」という状態で退職した後、なかなか職が決まらず後悔しているそうです。
転職や職場変更を考えたほうがよい人の特徴
一方で、今の工場勤務を続けることで心身をすり減らしているなら、転職や職場変更を考えたほうがよいでしょう。
転職や職場変更を考えたほうがよい人の特徴は、次の通りです。
- 毎日のように体育会系の上司・同僚やお局から理不尽に怒鳴られる
- 教育が雑すぎて放置され、いつまでも新しい工程や機械操作を覚えられない
- 生産計画や人員のバランスがおかしく、残業や休日出勤が多すぎる
- 給料が生活に見合わない
- ライン作業などで心身ともに疲労が溜まり体調を崩しかけている
こうした状況まで我慢してしまうと、「工場勤務が向いていない」のではなく、単に劣悪な職場に消耗させられているだけのことがあります。
また、「もう限界なのに、高卒だからここで耐えるしかない」と思い込んでいる場合も注意が必要です。その考え方のままだと、仕事への不満だけでなく、自分の価値まで低く見てしまいやすくなります。今の職場に強い違和感があるなら、我慢し続けることが正解とは限りません。
「仕事が底辺」なのではなく「職場が合っていない」だけのこともある
ここで覚えておきたいのは、つらさの原因が「工場勤務という仕事そのもの」にあるとは限らないことです。
同じ工場勤務でも、会社の規模、上司の当たり外れ、教育体制、配属工程、夜勤の有無などで働きやすさは大きく変わります。今いる職場が合わないだけなのに、「工場勤務だから底辺なんだ」「高卒の自分にはこれが限界なんだ」と考えてしまうと、必要以上に視野が狭くなってしまいます。
筆者としては、まず「今つらいのは仕事そのものなのか、それとも今の職場環境なのか」を切り分けて考えるのがおすすめです。ここを見誤ると、本当は環境を変えれば楽になるのに、自分自身を責め続けてしまいます。
工場勤務という肩書きだけで、自分の価値を決める必要はありません。続けるにしても離れるにしても、大事なのは「自分に合った働き方かどうか」で判断することです。
工場勤務がつらい高卒の人ができる現実的な対処法
工場勤務がつらいと感じているときは、「高卒だから我慢するしかない」と思い込まないことが大切です。
実際には、今の職場の問題を整理したり、働き方を少し変えたりするだけで、気持ちがかなり楽になるケースもあります。ここでは、高卒で工場勤務をしている人が取りやすい現実的な対処法をまとめます。
まずは今の職場の何がつらいのかを切り分ける
最初にやるべきなのは、「工場勤務そのもの」がつらいのか、「今の職場環境」がつらいのかを分けて考えることです。
体力的にきついのか、人間関係がしんどいのか、夜勤が合わないのか、給料に不満があるのかによって、取るべき対処法は変わります。ここが曖昧なままだと、「もう全部無理だ」と感じやすくなり、必要以上に自分を追い込んでしまいがちです。
まずは、何がいちばんつらいのかを紙やスマホのメモに書き出してみるだけでも構いません。問題が見えると、気持ちが少し整理しやすくなります。
資格取得や異動、転職で状況が改善することもある
今の職場をすぐ辞めるべきとは限りません。場合によっては、資格取得や別工程への異動、別会社への転職で状況が改善することもあります。
工場では、担当する工程や役割が変わるだけで、仕事の負担や向き不向きが大きく変わることがあります。ライン作業がきつくても、検査、品質管理補助、資材管理、設備関係など、比較的合う仕事が見つかるケースもあるでしょう。
また、業務に関係する資格を取ることで、任される仕事や評価が変わる場合もあります。今の職場に改善の余地があるなら、すぐに見切りをつける前に、異動やスキルアップの余地がないか確認してみるのも1つの方法です。
一方で、我慢を続けるべきではないケースもあります。
たとえば、体調を崩しかけている、毎日のように怒鳴られる、残業や休日出勤が多すぎる、給料が低くて生活が苦しいといった状況なら、転職や職場変更を考えたほうがよいでしょう。こうした問題は、根性で耐えれば解決するものではありません。
とくに、人間関係や職場の雰囲気が悪い場合は、自分の努力だけではどうにもならないことも多いです。限界を超えてから動くと立て直しが大変になるため、「まだ頑張れるかも」と無理しすぎないことが大切です。
以下では、筆者の知人や同僚が行ったキャリアチェンジをいくつか紹介します。
- 電験3種やエネルギー管理士を取得して、大手ビルメンテナンス会社に転職
- 別の食品工場に転職し、うつ一歩手前から一転してリーダーとして活躍
- 製造現場から品質管理に異動し、精神的に回復
- うつ病で退職した後、1年以上療養し、配偶者の親のつてで経理職に転職し少しずつ改善
- 【筆者】別会社の食品工場に転職後、FPや簿記を取得しながらWebライターとして独立
「高卒だから無理」と決めつけず、選択肢を探してみる
工場勤務がつらいときほど、「高卒だから他に行けない」と思い込みやすくなります。しかし、実際には高卒からでも転職できる仕事はありますし、今より合う職場に移れる可能性も十分あります。
もちろん、学歴があるに越したことはない場面もありますが、世の中には学歴よりも、働く姿勢や実務経験が見られる求人も少なくありません。とくに、若いうちは未経験から挑戦しやすい仕事もまだ残っています。
大事なのは、「自分には無理」と最初から決めつけないことです。今すぐ辞めるかどうかは別としても、どんな仕事があるのか、どんな職場なら自分に合いそうかを一度調べてみるだけでも、気持ちはかなり変わります。視野が広がると、「この職場しかない」という思い込みから少し抜け出しやすくなるでしょう。
元高卒工場勤務の筆者が伝えたいのは「工場勤務=底辺」ではないということ
工場勤務は、世間から「底辺」と言われやすい仕事かもしれません。とくに、高卒で工場に就職した人ほど、学歴や職業に対する偏見を真正面から受けてしまい、「自分はこのままでよいのだろうか」と悩みやすいと思います。
しかし、元高卒工場勤務の筆者としては、工場勤務そのものが底辺なのではなく、偏見を持たれやすい仕事であると考えています。
もちろん、怒鳴る文化がある、教育が雑、残業が多いのに給料が低いといった、しんどい職場があるのも事実です。ただ、それは「工場勤務だから底辺」なのではなく、「その職場環境に問題がある」だけのことも少なくありません。
もし今、工場勤務をしていてつらさや劣等感を抱えているなら、自分の価値まで低く見る必要はありません。まずは、仕事そのものが合わないのか、今の職場が合わないのかを切り分けて考えてみてください。













