仕込み作業も広い意味ではライン作業の一種なのですが、ベルトコンベアから流れてくる食品を見る、機械の動きを調整するといった、世間一般の方がよくイメージされる単純な流れ作業とは少し違います。
製品によっては、何十キロもある原材料の運搬・投入や、原材料ごとの繊細な取り扱いなどが必要です。「毎日体力勝負で大変」「原材料の管理が難しい」など、他のライン作業とは性質が異なる大変さがあります。
一方で、比較的自分の裁量で動けたり、食品そのものの知識が深まったりなど、仕込み工程ならではのやりがいや楽しいことも少なくありません。
筆者が過去に働いていたアイス工場では、異動されてきた先輩社員が、「機械の調整は苦手だったけど、原料の成分やそれ関係の機械を勉強するのは楽しい」と口にしたことがあります。良くも悪くも他のライン作業とは内容が異なるので、他の工程が合わない人でも、仕込み作業の適性があるというパターンも珍しくないでしょう。
この記事では、食品工場の仕込み作業について概要をざっと解説します。
Contents
食品工場の仕込み作業とは?
食品工場の仕込み作業とは、要するに製品の中身を作ること、およびその準備をすることです。
例えば、お菓子やパン工場なら生地作り、冷凍食品なら肉・魚・野菜の下処理、飲料なら製品液の配合・均質化・殺菌などが例として挙げられます。

レストランで例えるなら、買ってきてもらった材料をチェックし、レシピ通りに分量を分けてから、実際に料理する作業に近いです。
食品工場の仕込み作業は、原料の受け入れや選別、洗浄、解凍、カット、計量、混合、投入、温度確認など、後工程がスムーズに進むための土台を作る役割があります。
仕込み作業がうまく行かない=製品の中身が作れないということになるので、地味ながらも非常に大切な仕事です。
詳細な仕込み作業の内容は、製品の種類によって大きく変わります。「仕込みがある職場」と聞いても、実際の仕事内容は製品次第でかなり変わると見ておいたほうがよいでしょう。
食品工場の仕込み工程で実際に行う作業
細かな作業は製品によって大きく異なるものの、食品工場の仕込み作業は大まかには以下に分けられます。
- 原料の受入・選別
- 洗浄・解凍・カットなどの前処理や計量などの準備
- 原料の投入・調合
- 温度や状態の確認、次工程への受け渡し
原料の受け入れ・選別
仕込み作業の最初は、仕込みに使う原料を受け入れて状態を確認するケースが多いです。大きな工場であれば受入自体は委託企業が担当することも多いですが、中小企業の場合は自社の作業者が担当するケースもよくあります。

私の勤め先は、委託企業の担当者の方が工場の窓口で受け入れて、その後は私たちがフォークリフトなどで倉庫まで運んでチェックするという流れでした。
受け入れた原料には、受入日、賞味期限、製造元、製造ロットなどが記載されているので、それらをチェックし記録しておきます。原料や仕込んだ製品の管理に必要な大事な情報であるため、間違いがないようにしっかりと確認します。
洗浄・解凍・カットなどの前処理や計量などの準備
受け入れた原料を必要分だけ倉庫などから出してきて、仕込みで使えるように前処理を行います。
肉・魚・野菜などを取り扱う食品工場であれば、原料の選別や不要部分のカット、洗浄、解凍などの前処理が必要です。
お菓子やアイスなど粉体原料や液体原料を使う食品工場なら、必要分だけ粉体原料や一斗缶などを運んだり、粉体・液体の端数の計量など実施します。
雑な処理や分量間違いなどが起こると、製品の風味・組織の不具合、原料ロスなどが発生するため、正確な作業が求められます。
原料の投入・調合
前処理や計量が終わった後は、準備した原料を混ぜる、味を整える、機械へ投入するといった作業に移り、製品の中身を作っていきます。
レストランで言う調理なので、「楽しそう」「いい匂いがしそう」と思われるかもしれませんが、おそらくほとんどの工場においては戦場と化している工程だと思われます。なぜなら、台所ではなく食品工場で1日の製造量が何百、何千、何万キロという世界なので、投入・調合する原料の数も非常に多いためです。
例えば筆者の場合だと、以下の原料を1日に何度も何度も持ち運び、投入を繰り返していました。
- 1袋あたり20~30キロの脱脂粉乳、ココアパウダー、グラニュー糖など
- 1缶あたり10~20キロの植物油脂、牛乳、練乳など
- 1個10~20キロのチョコレート、マーガリン、バターなど

大手の工場だと、大量に仕込むものは投入作業も自動化が進んでいるようですが、依然として手作業も多いようです。
その上で、乳化剤や安定剤などの原料については、慎重な投入が求められました。投入タイミングや投入方法を間違えると、アイスクリームの組織がうまく形成されず、製品にならないからです。
このように、投入・調合作業は作る製品によって作業内容や注意点が大きく変わる可能性があります。
温度や状態の確認、次工程への受け渡し
仕込みは、材料を混ぜて終わりではありません。適切な温度や状態を確認しながら作らなければ、風味や組織が壊れたり、微生物が発生したりするなど、大きな問題になります。
例えば、パンなら仕込み後の生地の練り具合や温度、乳製品やビールなら発酵や殺菌につながる前段階の状態確認などが挙げられます。筆者が勤めていたアイス工場の場合は、予備乳化の温度や殺菌温度、均質圧の強さ、冷却温度などをチェックしていました。
こうした状態管理を経て、次の「容器に入れる」「カップに充填する」「焼き上げる」といった工程に作ったものを渡します。
このように、仕込み作業は原料を動かすだけでなく、「次の工程に渡して大丈夫な状態か」を見極める役割があると言えるでしょう。
【製品別】食品工場の仕込み作業のおおまかな内容
ここからは、食品工場で作る製品の種類別に、どのような仕込み作業を行っているのかおおまかにまとめました。
「食品衛生法」や「食品別の規格基準」なども参考にしています。
冷凍食品工場の仕込み作業
冷凍食品工場の製品の仕込みは、原料の選別や下処理などを行います。食品衛生法に基づく「冷凍食品の規格基準」などに従った作業が必要です。
例えば、魚や肉、野菜などの原料について、不要部分の除去、整形、重量調整、剥皮、種子除去、切断などを行い、冷凍前の状態を整えていきます。
冷凍後の品質は前段階の処理にかなり左右されるため、見た目以上に丁寧さが求められる仕込みです。機械での自動化が進む一方で、人の手による繊細な作業が必要な部分も少なくありません。
参考:厚生労働省job tag「冷凍加工食品製造」
惣菜工場の仕込み作業
惣菜工場では、百貨店やスーパーマーケットなどで販売する各種惣菜を製造します。
野菜や肉、魚介などの材料に対して、洗浄、皮むき、裁断、不要部分の除去といった前処理を行うのが基本です。その後、混合する原料は混合機器に投入したり、煮炊きしたりなどを行います。
惣菜の土台を作る工程なので、速さだけでなく、鮮度や衛生面への配慮も欠かせません。出荷までの時間が短い商品も多く、作業スピードや仕事の段取りも重要になります。
参考:厚生労働省job tag「惣菜製造」
パン工場の仕込み作業
パン工場の仕込みは、製品となるパンの生地作りおよびその準備です。
まずは小麦粉、イースト、塩、砂糖、油脂、粉乳、卵などを計量し、ミキサーで混ぜて練り上げ、生地を作ります。パンの種類によっては、クリームを炊いたり、ジャムやあんの状態を調整したり、レーズンなどの副材料を準備したりすることもあり、原料に関する幅広い知識も求められるでしょう。
仕込みが終わった生地は、その後の発酵、成形、焼き、包装工程に流れていきます。パン生地は練り具合、硬さ、温度などによって品質が変わるため、工程管理が重要になります。
参考:厚生労働省job tag「パン製造、パン職人」
乳製品工場の仕込み作業
乳製品工場では、牛乳、バター、チーズ、ヨーグルトなどを製造します。また、これらを原料として使用するアイスクリーム工場や、練乳や粉乳を製造する工場なども、乳製品工場の例として挙げられます。
乳製品の仕込みは、「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令(乳等省令)」に基づく、厳格な製造が必要です。飲用牛乳では生乳の受け入れ後の検査や均質化、殺菌前の調整が重要ですし、ヨーグルトや乳酸菌飲料では砂糖や香料の調合、乳酸菌を加える前の準備も仕込み作業の一種です。
参考:厚生労働省job tag「乳製品製造」
ビール工場の仕込み作業
ビール工場の仕込みは、麦汁づくりが中心です。主に麦芽、副原料、ホップ、水の4つが原料です。
まずは、受け入れた麦芽やホップなどの香りや風味に問題がないかを確認します。次に、粉砕した麦芽を湯に浸して麦汁を作り、そこへホップを加えて煮込み、最後に香り用のホップを加えます。
煮込みが終わった麦汁を急冷しながら発酵タンクへ移し、酵母を投入するところまでが仕込みです。液体の状態や香り、発酵につながる条件を整える仕事になります。ビールは製麦から、仕込み、発酵、熟成、ろ過を経て、スーパーマーケットや居酒屋に納入されます。
参考:厚生労働省job tag「ビール製造」
水産ねり製品工場の仕込み作業
水産ねり製品とは、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、つみれなどのことです。
水産ねり製品では、生鮮魚から魚肉を分離し、水晒しや脱水を行って精製魚肉を作る工程があります。
通常は冷凍すり身を解凍して使い、食塩を加えながら「らいかい」を行います。空ずり(そのまますりつぶす)、塩ずり(塩を加えてすりつぶしタンパク質を抽出する)、本ずり(すり上がった身に砂糖やみりんなどの調味料やでんぷんを加えて仕上げる)などの作業を、かくはん機などで進めます。
その後、仕込んだ製品を製品ごとに決められた形に成形することで、店頭に並ぶ状態になるのです。
参考:厚生労働省job tag「水産ねり製品製造」
食品工場の仕込み作業で大変になりやすい点
食品の仕込み作業で大変になりやすいのは、やはり体力面です。また、仕込みは工場ラインにおける最初の工程であるため、ここでトラブルが起こると後工程がストップする可能性があるというプレッシャーが存在します。
原料や器具によって体力負担が変わりやすい
仕込み工程では、重量のある原料を扱ったり、水回りで作業したりなど、体力的に大変な作業に従事するケースが多いです。
もちろん製品によっては大きな差がありますが、原料を運搬し投入する、大量の肉や魚を下処理するなどの作業は、ラインの単純作業とはまた違った疲れ方をしやすい工程です。

筆者は高校時代運動部に入っていましたが、それでも体力的に大変な日がありました。
前処理や計量のミスが後工程に響きやすい
仕込みは前段階の工程なので、ここでのミスは後工程まで引きずる可能性があります。
パンなら配合や生地温度、ビールなら原料処理や調合条件、惣菜や冷凍食品なら下処理や計量のズレが製品の品質に直結します。
派手な工程ではなくても、仕込み担当が丁寧さを求められやすいのはこのためです。

アイスクリームミックスの場合、大きなミスをすると数十トンもの製品を一気に駄目にするリスクという重圧がありました(もちろん、そうならないようなマニュアルや作業方法は確立されてはいるのですが)
温度や衛生面で気を抜きにくい
食品工場の仕込みでは、単に材料を準備するだけでなく、温度、衛生、原料状態を見ながら進める必要があります。
冷凍食品の急速凍結前の管理、乳製品やビールの調整、つけ物や惣菜の前処理など、どの製品でも「次工程へ安全に渡せる状態か」を意識する場面が多いです。そのため、黙々とした体力作業に見えても、実際には繊細な感覚も求められる工程だといえます。
仕込み作業が向いていそうな人
仕込み作業が向いているのは、単純に同じ動作を繰り返すよりも、段取りを考えながら動くほうが苦になりにくい人です。
原料の状態を見て動く、順番を意識して進める、次の工程を考えて準備する、といった感覚が合う人は比較的なじみやすいでしょう。
一方で、「食品工場の仕事=同じ作業を繰り返すだけ」と想像して入ると、仕込みではギャップを感じやすいかもしれません。
仕込み作業は原料や製品によって食品工場ごとにやることが変わりやすく、前処理や計量、調合、温度確認まで含めて覚えることもあります。仕込みは、思った以上に考えながら動く工程になると言えます。

もちろん、仕込みに使う製造機器の分解点検や業務改善といった仕事も担当します。現場によっては、原料受入や運搬で使うフォークリフトの免許があると重宝される人材になる可能性があります。
仕込み工程を知ると、食品工場の仕事全体が見えやすくなる
食品工場の仕込み作業は、製品によって内容も大変さもかなり違います。
だからこそ、「食品工場の仕事って実際どうなのか」を考えるときは、ライン作業や包装だけでなく、前段階の仕込みで何が行われているのかまで見たほうが、仕事全体のイメージをつかみやすくなります。
食品工場の仕事内容をもう一段深く理解したい方は、仕込み工程の違いにも注目してみてください。















筆者は、新卒からアイス工場の仕込み工程に配属され、約8年間勤めた経験があります(食品工場歴自体は10年程度)。