甘~い初めてのバレンタインチョコ。
仕事合間に糖分・気合を補給してくれるチョコ菓子。
誕生日の大きなチョコレートケーキ。
皆様はチョコレートにどんな思い出をお持ちでしょうか?
私の周りもみんなチョコレートが好きで、彼らからもよく贈り物で頂くことが多いです。
そんな私にとってチョコレートとは……
敵です。
完全なる悪です。
はい。
2回目の3000文字チャレンジ(しかも遅刻)と同様、今回も何言ってるかわからないと思うので説明します。
前回の3000文字チャレンジ時にも触れたのですが、私は元工場勤務でして、
お菓子工場のようなところで働いてました。
ですので、他の人よりもちょっとばかりチョコレートを扱う機会が多かったんです。
ただ、チョコレートの規模が、多分普通とは違います。
具体的に私が使っていたチョコレートは、
5kgの板チョコ
1箱15kgのチョコチップ
1袋20kgのチョコレートパウダー
同じく1缶20kgの冷凍チョコレート缶
凄まじい匂いを放つチョコレート香料
そして、ローリーによってトン単位で運ばれてくる大量の液状チョコレート受け入れetc……
こんな感じで、いわゆる業務用のチョコレートの賞味期限管理とか、原料の仕込みとか、製品チョコレート量や温度の調整などをやっていました。
それこそ、頻繁に全身チョコレートを浴びてたのです。物理的に。
で、こいつらなんですけど、とにかく扱いが難しいというか、製品にし辛いというか、
全然こっちの言うこと聞いてくれません。
世間ではバレンタインなどで甘い者の代表格として君臨していますが、やつらは私に一度もデレてくれませんでした。
たとえば5kgのチョコレート。
そのままだとデカすぎるので、洗浄・殺菌したハンマーで砕いてから原料を混ぜてるタンクにぶちこむんですけど、
破片が鋭いので、ゴム手袋の上からたまに突き刺してきます。超痛いです。
それでゴム手袋が破れたら、どんだけ忙しかろうと作業中断です。
異物混入はダメです。絶対。
(食品工場の異物混入対策は、本当にしっかりしています)
しかも、チョコレートの硬度って結構なもので、砕くのにも一苦労なんですよ。振動で体がブルブルします。
因みに、砕いた時の力が強すぎてチョコレートが爆発四散して床に落ちた場合、ロスとして報告です。
理不尽ですね。
次の敵はチョコレードパウダー。
なんと奴ら、食品工場が誇る高性能なマスクとほっぺとの接触面の隙間、
そして細かいマスク繊維の間をくぐり抜けて、鼻や口の中に侵入してきます。
しかも、粉自体の重量がめっちゃ軽くて、袋を開けた時点で粉が宙に散乱します。
そうなると、もう侵入の防ぎようがありません。一度中に入ったら外に出ることはありませんし。(というか出たらまずい)
ですので、その日チョコレートパウダーを使用した人を見分けるには、鼻の穴をチェックします。
眉毛・まつげもほんのり茶色です。
このチョコレートパウダー投入作業は60歳を超えた嘱託社員のベテランさんからよく、「わしゃもう嫌じゃ」と言われて手伝わされましたね。
これも防ぎようがありません。
まあ逆に、私が新入社員のころからずっとこんなパワープレイな職場で居てくれて、感謝しかありませんでしたが(笑)
続いての敵は冷凍で運ばれてくるチョコレート缶。
生クリームや果汁などの液状原料は、賞味・消費期限の関係で冷凍されて送られてくることが多いのですが、
こいつら、固まりすぎて全然溶けてくれません。
チョコではなく、もはやただの石です。
特に、前日に受け入れて次の日に使うとなると、とりあえず製造計画を立てた人物の不幸を、わりと本気で願います。
その後、フォークリフトを運転しながら「もう止めてくれよ……」と呟いて泣く泣く原料を移動させます。
そして迎えた当日。
もう仕方ないので、密封状態の缶ごと熱湯にぶちこんだり、蒸気を吹きかけたりします。超熱い。
でも、そうしたらすぐに溶けそうじゃないですか?
やつらは溶けません。
これが1日数百缶とかになると、割と本気で会社を休みたくなります。休み(め)ませんけどね。
というか、全体的に重量が重いんだよお前ら!!
おかげで体幹だけは今でも自信あるよ! テニスするときしか使わないけど!
まあ、こんな感じでチョコレート原料は、製品の仕込みの段階で超めんどくさいのですが、
他の原料と混ぜた後、次の殺菌工程や香料投入の工程に送るのも超めんどいです。
やつらを入れた製品はどうしても高粘度、つまりすごくドロドロになります。
ですので、原料を次の工程に送る流体ポンプが、たまに詰まって吐き出さなくなります。
時にポンプが「もう俺無理っす。こんなドロドロのやつ送れないっす」と限界を迎え、高負荷エラーにより動かなくなります。
残業確定の瞬間です。
自分でやってもそうですし、嘱託社員さんや派遣社員さんがつまらせてしまった場合も、一応社員の立場として責任持って私が対処します。
とりあえずダッシュで電気室の工務課に頼み、ポンプの元電源のブレーカーをもとに戻してもらうのですが、
その際、おっさんたちに「チョコレート大変やねぇwww」と必ずからかわれます。
ほんと理不尽。でもご対応ありがとうございました。
電気復活後も、そのままポンプを回したらさっきの二の舞なので、更に時間をかけてチョコ製品を溶解。
そして時に、ポンプをチョコまみれになりながら分解点検します。
「手にチョコレート付いちゃった♪」とかであれば良いですが、場所次第ではたまに頭からチョコレートを浴びます。
原料ロスも出るし、もう最悪です。
しかも、その日1日、私は全身チョコレートの匂いが取れません。
コンビニにも寄れません。寄りますけどね。
匂いについてはチョコレートの香料も同様で、というか臭気に関してやつらの右に出るものはいません。
やつらは1,000kgに対し、数十グラム単位でその効力を発揮します。
ただし、チョコレートの香料自体はまだマシな部類。(みかんも!)
これがミントの香料などと合わさると、現場全体が歯磨き粉の匂いに包まれます。
香料の蓋を開けて少し時間が経つと、現場の入り口まで歯磨き粉の香りです。結構辛いです。
香料を製品に入れる担当となった方、香料の計量担当になった方の心情はお察しください。
あ、因みに香料はガソリンとかと同じように「第四類引火性液体」に分類されるれっきとした危険物です。
保管する場所も、きちんと防火などの対策を講じなければなりません。(乙四試験の法令に出る)
一度、香料の仕入先の工場が燃えて、しばらく取引ができなくなったことがあります。
取扱いには十分に気をつけましょう。
……こんな感じで、私はずっとチョコレートと戦ってきました。
あいつらマジで私に容赦ありませんでした。
ただ、やっぱりチョコレートって世間では人気商品なんですよね。
食品工場で働いていると、事務の方から「お客様の声」みたいなものが届くのですが、
「チョコレート美味しかった」だったり「子供も喜んでくれました」だったり、そういった声が多かったです。
そういった声を聞いたり、実際に作った商品が店頭に並んでいるのを見たりしてニヤニヤ喜べるのは、食品会社で働いている者の特権でした。
携わった商品を見て、自分が働いている工場の名前が書いてあると、
どことなく不思議な気持ちになったものです。
苦労が報われる! みたいな聖人のようなコメントはできませんが、
まあ、チョコレートが好きな方に食べてもらえるのならそれで良いのだと思います。
ここに書いたのは1例で、チョコレートって他にもいろいろ面倒な管理が必要なのです。
世のチョコレート製品は、こうして現場の人間たちによる戦いによって生み出されているのだということを、なんとなく覚えておいていただければ幸いです。
以上、ここまで書いておきながら、実はチョコレートが苦手で食べられない家鴨あひるでした。
チョコレートの官能検査、地獄。